「保育士の平均年収ってどれくらいなんだろう?」
「保育士の給与は地域で異なる?」
保育士の給与の話。一般的に、保育士の給与は低いというイメージがありますが、実際はどうなのでしょう。さらに、給与は地域ごとにどれくらい異なるのか、今後上がっていく可能性はあるのでしょうか。
給与についての疑問って結構たくさんありますよね。他人にはなかなか聞きにくいけれど、とても気になる問題。
そこで、保育士の給与についてまとめました。平均年収や地域差、今後の給与引き上げなど、保育士の給与について徹底解説いたします。ぜひ参考にしてくださいね。
まずは、保育士の平均年収についてご説明します。
冒頭でもお伝えした通り、世間一般的には「保育士の給料=低い」というイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。具体的な金額をみながら詳しく確認していきましょう。
ライフスタッフィングの調査によると、保育士(正社員)の平均年収は3,160,042円という結果がでています。
ちなみに、内閣府『平成30年分民間給与実態統計調査結果』より発表されている平成30年度の正社員全体の平均年収は503万円。そのうち、男性正社員の平均年収は559万円、女性正社員の平均年収は386万円とされています。
保育士の9割以上を女性が占めている現状を踏まえて、保育士の平均年収を女性全体の平均年収と比較すると、年収の差はおよそ70万円。やはり、保育士の給与水準は全体的に低い傾向にあります。
保育士全体の給与水準は低い傾向にあるものの、実は、地域や役職などによっても給与額が大きく変わります。
そこでここからは、地域やキャリア・役職でどれくらい平均年収が変わるのかを詳しく確認していきましょう。
まず、給与額が高い地域はどこなのでしょうか。ライフスタッフィングの調査結果をもとに、平均年収の高い地域トップ5を下記にまとめました。
1位京都府:4,217,377円
2位東京都:3,621,409円
3位兵庫県:3,551,822円
4位長野県:3,411,337円
5位千葉県:3,406,978円
一方、同調査で、平均給与の低い結果が出た主な地域は次の通りです。
福井県:2,700,945円
岐阜県:2,869,453円
宮城県:2,881,777円 など
給与額が高い京都府と比較すると、なんと年収の差は100万円以上。
どうしてここまで差が開くのでしょうか。続いての項でその理由を確認していきましょう。
実は、保育園の主な収入源は国や自治体からの補助金であり、その収入の中から保育士の給与が支払われています。そして、人口が多い、物価が高いなどといった地域にはより多く補助金が支給されるため、結果として保育士の給与額に差が生じるのです。
また、各自治体が保育の分野にどれだけ予算を打ち出しているかも差を生み出す一つの要因となっています。
例えば、上記の調査で平均年収額がトップだった京都府は、保育士の処遇改善のため独自に約49億円の予算を投入。そして、京都市内の民間保育園や認定こども園の保育士の平均水準を全国平均の1.34倍にまでアップさせています。
さらに、「京都式保育人材キャリアパス」という制度を全国で初めて導入しているものポイント。保育士の生涯にわたるキャリアアップの道筋を示し、やりがいをもって長く働いてもらうための取り組みも実施されています。
このように、国や自治体からの補助金の違い、さらに、各自治体独自の保育士処遇改善施策の違いによって、地域による給与の差が生じているのです。
つづいては、キャリアにおける給与額の差をみていきましょう。
まず、厚生労働省の『平成30年賃金構造基本統計調査』をもとに、保育士の年齢別の平均月給・ボーナス・年収を下記にまとめました。
年齢 | 月給 (ボーナス) |
年収 |
---|---|---|
20~ 24歳 |
200,600円 (470,900円) |
2,878,100円 |
25~ 29歳 |
219,400円 (712,800円) |
3,345,600円 |
30~ 34歳 |
230,800円 (714,300円) |
3,483,900円 |
35~ 39歳 |
237,000円 (763,600円) |
3,607,600円 |
40~ 44歳 |
246,900円 (815,600円) |
3,778,400円 |
45~ 49歳 |
250,900円 (807,700円) |
3,818,500円 |
50~ 54歳 |
258,400円 (846,500円) |
3,947,300円 |
55~ 59歳 |
259,200円 (847,000円) |
3,957,400円 |
60~ 64歳 |
238,100円 (708,200円) |
3,565,400円 |
年齢 | 月給 (ボーナス) |
年収 |
---|---|---|
20~ 24歳 |
206,900円 (415,100円) |
2,897,900円 |
25~ 29歳 |
224,800円 (644,500円) |
3,442,100円 |
30~ 34歳 |
263,000円 (703,300円) |
3,859,300円 |
35~ 39歳 |
302,500円 (978,300円) |
4,608,300円 |
40~ 44歳 |
323,100円 (1,215,300円) |
5,092,500円 |
45~ 49歳 |
277,500円 (850,100円) |
4,180,100円 |
50~ 54歳 |
269,900円 (913,800円) |
4,152,600円 |
55~ 59歳 |
246,100円 (568,800円) |
3,522,000円 |
60~ 64歳 |
202,200円 (712,500円) |
3,138,900円 |
65~ 69歳 |
240,800円 (440,000円) |
3,329,600円 |
女性保育士を例にみてみると、新卒年齢である20~24歳の月給は206,100円で、平均年収は2,944,100円。その後、65~69歳までに、月給247,100円、平均年収3,717,900円まで上がっており、経験を経ることで給与が徐々にアップする傾向にあることがわかります。
また、内閣府の『平成29年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査』によると、役職別の1人あたりの平均給与額は次の通りとされています。なお、ここでは、私立保育園と公立保育園の給与額の違いも確認しておきましょう。
職種 | 私立/月給 | 公立/月給 |
---|---|---|
施設長 | 528,826円 | 594,465円 |
主任保育士 | 397,212円 | 518,548円 |
保育士 | 262,158円 | 279,797円 |
保育士から主任保育士にキャリアアップすることで、私立保育園では月給が約13万円増、公立保育園では約24万円増。経験年数に加え、役職手当が付くことでだいぶ給与が上がることがわかります。
尚、雇用体系が私立保育園か公立保育園かによっても給与額が異なり、平均月給は公立保育園の方が高め。というのも、公立保育園で働く保育士は地方公務員となるため、勤続年数によって定期昇給があるからです。一方、私立保育園の場合は、その園の給与規定に準ずるため同様の定期昇給などは望めない傾向があります。
【参照】内閣府「平成29年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」
以前から懸念されている待機児童と保育士不足問題。加えて、2019年10月より保育園利用料が無償化したことで保育園はさらなる需要拡大が見込まれています。そのため、保育士の確保は緊急の課題。
とはいえ、薄給のままでのさらなる人材確保は難しいもの。厚生労働省の『保育士等に関する関係資料』でも、就業している約6割もの保育士が、「給与・賞与等の改善」を希望していることが報告されています。
そこで、厚生労働省は2013年より新たな取り組みを開始。保育士の給料を引き上げ、新たに必要となる保育士を確保するための処遇改善が進められてきました。
では、今後、保育士の給与はどのように変わっていくのでしょうか。これまでの政府の取り組みと気になる2019年の給与について詳細を確認していきましょう。
【参照】『保育士等に関する関係資料』
保育士の給与を上げる取り組みは、2013年「保育士処遇改善等加算」という制度より開始されました。これは、保育士の勤続年数や経験に応じた給与改善、及びキャリアアップの取り組みを行った保育園に対して、保育士の給与を上げるための補助金が支給されるという制度です。
その後も、保育士の給与は徐々にベースアップされ、2019年度には約1%(月額約3,000円)の給与引き上げが実施されています。
・2019年度:1%(月額約3,000円)給与アップ
これにより、2013年度以降の取り組みと合わせて、保育士の給与は合計で約13%(月額約41,000円)もアップしていることとなり、大きく改善されてきていることがわかります。
2017年度には、それまでの取り組みに加えて、「保育士等キャリアアップ研修」という新しい制度が設けられ、保育士の処遇改善がさらに進められています。
この制度は、指定の研修を経て、新たに新設された「副主任保育士」・「専門リーダー」・「職務分野別リーダー」という3ついずれかの役職に就くことで、月額5,000円~40,000円の給与アップを目指せるというもの。
ちなみに、この制度ができるまでは、園長と主任保育士以外に役職のない保育園が多く、さらに主任保育士に昇進するためには一般的に10年以上の経験が必要となることから、多くの保育士が役職に就きにくい状況にありました。
そこで、『保育士等キャリアアップ研修制度』により、経験の浅い保育士や中堅層でも、キャリアアップを目指せる仕組みが作られたのです。
では、新設された3つの役職へ就くための条件ともらえる金額について簡単に確認しておきましょう。
管理職の業務を担当。この役職に就くための条件は次の通りです。
経験年数7年以上
職務分野別リーダーを経験
マネジメント+3分野以上の研修を修了
副主任保育士としての発令
⇒月額40,000円給与アップ。
専門性の高いリーダーとして現場の保育士をサポート。この役職に就くための条件は次の通りです。
経験年数7年以上
職務分野別リーダーを経験
4分野以上の研修を修了
専門リーダーとしての発令
⇒月額40,000円給与アップ。
専門分野のリーダーとして現場の保育士を統率。この役職に就くための条件は次の通りです。
経験年数3年以上
職務分野研修を修了
研修を修了した職務分野別リーダーとしての発令
⇒月額5,000円給与アップ
【参考】厚生労働省「保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について」
給与アップ以外にも保育士の勤務環境を改善するための政策が進められています。
そのひとつが「保育士宿舎借り上げ支援事業」です。これは、保育士の宿舎としてアパートやマンションの部屋を保育園が契約し、その家賃を国や自治体が1人当たり月82,000円を上限に補助してくれるという政策です。
女性全体の平均を下回っている保育士の給与。
これから保育士を目指そうとしている方も、今後保育士を続けていこうか悩んでいる方も、薄給となるとちょっと考えてしまいますよね。
しかし、待機児童問題を背景に2013年より保育士の処遇改善が開始され、2019年までに給与は約41,000円もアップ。保育園利用料の無償化などに伴い、保育園の需要が今後も拡大することを踏まえて、保育士の給与は今後も改善していくことが考えられます。
キャリアアップ研修を積極的に活用して、さらなる給与アップを目指してみるのもよいでしょう。
なお、保育士不足改善の動きは全国に広がりを見せています。お住まいの自治体でも処遇改善に向けて何か政策を進めている可能性もありますので、ぜひ都道府県や市町村の施策を確認してみてくださいね。
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