保育士の処遇を改善するため、2017年度に新たに導入された「保育士等キャリアアップ研修」制度。3つの役職が新設されたことにより、昇進や給与アップが目指しやすくなりました。
一体どのような制度なのか、さらに、研修の受け方やメリットなど、保育士等キャリアアップ研修の気になる疑問を詳しく解説します。
今後のキャリアアップのために、ぜひお役立てください。
保育士不足の問題を解消し、さらに保育士を確保するため、国ではさまざまな処遇改善が進められています。その一環として導入されたのが「保育士等キャリアアップ研修」制度です。
どんな研修なのか、まずはその内容を詳しく確認していきましょう。
保育士等キャリアアップ研修が導入されるにあたり、「副主任保育士」・「専門リーダー」・「職務分野別リーダー」という3つの役職が新設されました。
管理職の業務を担当する役職。副主任保育士に就くための条件は次の通りです。
⇒月額最大40,000円支給
専門性の高いリーダーとして現場の保育士をサポートする役職。専門リーダーに就くための条件は次の通りです。
⇒月額最大40,000円支給
専門分野のリーダーとして現場の保育士を統率する役職。職務分野別リーダーに就くための条件は次の通りです。
⇒月額5,000円~支給
保育士等キャリアアップ研修における手当は、その役職に就いた保育士に直接支給されるわけではなく、国から園に一律で支給されたあと、園の方針に従って分配されます。
また、所定の保育士経験年数を経てキャリア研修を修了したからといって、必ず全員が役職につき、手当の満額が支給されるわけではありません。
園における役職の人数と手当の分配方法は少々ややこしいので、しっかりと押さえておきましょう。
副主任保育士と専門リーダーの対象者は、園長と主任保育士を除く、園の職員数の概ね1/3とされています。
たとえば、職員が17人の保育園の場合は、園長と主任保育士を除く15人のうち、1/3となる5人が副主任保育士および専門リーダーの対象者。
そして、必ず月額40,000円の支給が受けられるのは、この5人のうち半分となる2人(5÷2=2.5※小数点切り捨て)残りの3人については、職務分野別リーダーへの支給額を下回らない範囲で各園の方針により配分が決められます。
職務分野別リーダーの対象者は、園長と主任保育士を除く、園の職員数の概ね1/5とされています。
たとえば、職員が17人の保育園の場合は、園長と主任保育士を除く15人のうち、1/5となる3人が職務分野別リーダーの対象。そして、各園の方針によって月額5,000円以上(副主任保育士・専門リーダーの支給額を超えない額)の支給額を受けられます。
このように、キャリアアップ研修を受講することで手当が支給される可能性が上がります。ただし、役職に就ける人数には規定があり、さらに手当の分配方法は園に一任されているため、必ずしも満額受け取れるわけではないのでご注意ください。
保育士等キャリアアップ研修は、都道府県または都道府県知事の指定した研修実施機関で実施されます。
なお、修了資格である修了証は全国で有効となり、了証を受け取った都道府県と勤務先の都道府県が異なっても問題ありません。そのため、どの地域でも受講できます。
つづいて、キャリアアップ研修の内容を確認していきましょう。
研修には、専門分野別研修(6分野)・マネジメント研修・保育実践研修の合計8分野があります。
研修時間は、1分野につき15時間以上(2~3日)。副主任保育士・専門リーダーは対象となる4分野、職務分野別リーダーは担当する職務1分野の受講がそれぞれ必要です。
障害児保育に関する理解を深め、適切な障害児保育を計画する力、個々の子どもの発達状態に応じた障害児保育をするための実践的な力を身につけます。
⇒副主任保育士の必須分野
主任保育士の下でミドルリーダーに求められる役割と知識を理解し、園の円滑な運営と保育の質を高めるために必要なマネジメント・リーダーシップの能力を身につけます。
※保育現場における実習経験の少ない者、または長期間にわたり保育現場で保育を行っていない者(潜在保育士など)
子どもに対する理解を深め、保育士が主体的に適切な環境を構成し、身体を使った遊び、言葉・音楽を使った遊び、物を使った遊びなどさまざまな遊びを展開していく実践的な力を身につけます。
【参考】厚生労働省「保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について」
保育士等キャリアアップ研修の基礎知識を把握したところで、ここからは、この研修を受講することで得られるメリットについて確認していきましょう。
キャリアアップ研修では、専門的な知識と実践で活かせる力を、1分野につき15時間以上の時間をかけてじっくりと学んでいきます。
そのため、専門性が高まり、得た知識を即、保育に活かすことができます。研修の受講がそのままスキルアップにつながります。
すでにお話した通り、キャリアアップ研修を修了し役職に就くことができれば、副主任保育士・専門リーダーの場合、月額最大40,000円、職務分野別リーダーの場合月額5,000円以上の手当が支給されるようになります。
保育士としての能力の証明になるので、転職時に待遇がアップする可能性があります。
キャリアアップ研修を修了して交付された修了証は、全国で有効。また、産休や育休などで離職し、一度キャリアを中断していても、修了資格は継続して認められます。
そのため、転職や復職にはアピールポイントとなり、優位な条件で就職できる可能性が高まります。
最後に、保育士等キャリアアップ研修の受講方法を確認していきましょう。
キャリアアップ研修を受講するためには、保育現場での経験年数がある程度定められています。また、基本的にどの分野でも自由に受講できますが、役職によっては必須となる分野もあります。
受講条件をしっかりと押さえておきましょう。
すでにお話した通り、キャリアアップ研修は都道府県単位で実施されています。
厚生労働省のホームページやお住まいの自治体のホームページに、開催場所・日時・分野の内容などが掲載されますので、随時確認の上、インターネット・FAX・郵送などで申し込み手続きを行ってください。
保育士等キャリアアップ研修の導入により、3つの役職が新設され、保育士のキャリアアップの道筋がより明確になりました。
研修を修了することで、待遇の向上と給与アップの可能性が高まります。また、研修で得た知識と能力は、そのまま日々の保育へ活かすことができ、スキルアップにつながることでしょう。
なお、一度研修を修了すれば、全国どこででも、また一度キャリアを中断した場合でも有効のため、転職や復職にも大きなアピールポイントになりますよ。
保育士としてのスキルを磨き、キャリアを積んでいくためのキャリアアップ研修、ぜひ、受講を検討してみてはいかがでしょうか。
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