共働きの家庭が当たり前になり、子どもが小さいうちから保育園を利用したい人は増加しています。国を挙げて保育士確保の取り組みが進められていますが、保育士不足は依然として解消されていません。
保育士が不足している原因は、保育士になっても仕事が続かず離職してしまう人が多いことにあります。その理由としては、「給料面」「体力面」「人間関係」といった仕事への不満が大きく関係しているのです。
保育士不足の理由を理解できれば、働きやすい環境や働き方が見えてくるでしょう。保育士が長く働けるようになるための新しい働き方を考えていきましょう。
保育士不足の現状を数字で見ていきましょう。
厚生労働省の発表によると、平成29年度末の保育士の不足人数は74,000人とされています。また、平成30年の保育士有効求人倍率は3.20倍。保育士確保の取り組みが進められてはいますが、まだまだ保育士が不足しているという現状が見えてきます。
【参考】厚生労働省 「保育士確保集中取り組みキャンペーン」について
平成27年の厚生労働省の発表によると、保育士登録者数は119万人。そのうち保育士として働いている人は43万人。保育士として働いていない人は76万人でした。保育士登録をしている人のうち、約6割もの人が保育の仕事をしていないという結果です。しかし一方、保育士としての就業を希望しない理由が解消された場合に、保育士として働きたいかという問いに対しては、潜在保育士のうち約6割の方が「希望する」と答えています。
【参考】厚生労働省 保育士等に関する関係資料「登録された保育士と勤務者数の推移」
共働き家庭の増加により生じている待機児童問題があります。平成31年の厚生労働省の発表によると、平成30年10月の時点での待機児童数は、約47,000人。前年度の待機児童数と比べると約8,000人の減少が見られます。しかし、まだまだ保育園や保育士が足りておらず、待機児童問題は解消していません。今後、新設保育園の開設が進められ、保育士の成り手は常に求められています。
【参考】厚生労働省 平成 30 年 10 月時点の保育所等の待機児童数の状況について
長く働き続けるベテラン保育士が少ないという現状もあります。厚生労働省の発表によると、平成25年の時点で経験年数7年未満の保育士が全体の約半数。私立保育園においては、約6割にのぼります。新設保育園では特に、経験年数が長い保育士が求められますが、即戦力となる人材が少ないことは問題の1つです。保育園全体をみても、ベテラン保育士の離職は保育の質の低下という不安もあります。この問題からは、保育士が長く働き続けていきたいと思える環境や条件が整っていないことがみえます。
【参考】厚生労働省 保育士等に関する関係資料「保育士の経験年数、採用・離職の状況」
次に保育士が不足している理由をみていきましょう。
保育園で起きた事故やけがは、保育園と保育士の責任です。適切な対応と保護者の方への謝罪と説明が求められます。保育士は常に、子どもの命を保護者の方から預かっているという責任の重さを感じているのです。
保育士としての経験を積んでいくことで、事故やけがを減らすことはできます。しかし、どんなに気を付けていても、全て防ぐことはできません。子どもの事故に対する多大なプレッシャーが、保育士の一番の負担であることは無視できません。実際に厚生労働省の調べによると、保育士として働きたくない理由として最も多いのが、「責任の重さ・事故への不安」という結果でした。
保育士は給料が低いといわれています。実際に保育士の職場の環境改善では「賃金が希望と合わない」という声が最も多くあがりました。平成28年度の賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均年収は223万3,000円。全職種の平均年収は333万7,000円なので、保育士の平均年収は全職種の平均年収よりも約100万円低いという結果です。仕事量の多さや仕事内容と、賃金が見合っていないと感じる方が多いことも納得できます。
保育士は体力勝負の仕事です。子どもと一緒に走りまわったり、抱っこをしたりと体力を使う場面がたくさん浮かぶでしょう。
また、保育以外の仕事量も多く、定時で間に合わない日には残業の必要があります。そのため、年齢と共に体力に自信がなくなり、離職という道を選ぶ方も少なくありません。
実際に、「自身の健康・体力への不安」が、賃金面に次いで保育士として働きたくない理由で2番目に多いという結果でした。
保育はチームワークが重要です。職場の人間関係で仕事のやりやすさが大きく違ってくるでしょう。しかし、さまざまな保育観を持つ保育士が集まる中で、良好な人間関係を築くことは簡単ではありません。先輩や後輩との関係など、人間関係に悩み退職に踏み切る方もいます。厚生労働省が発表している潜在保育士ガイドブック「潜在保育士の実態について」によると、保育園を離職した職場環境に関する理由は、人間関係が最も多いという結果でした。
【参考】厚生労働省 潜在保育士ガイドブック 潜在保育士の実態について 15ページ 「離職理由について:職場環境」
保育士は子どもの保育のほかにも、事務作業や行事の準備など、日々多くの仕事を抱えています。勤務時間中に仕事が終わらない場合は、残業や持ち帰り仕事をして仕事をこなすことも少なくありません。勤務時間が長いことへの不満を抱える保育士もたくさんいるのです。
潜在保育士が職場復帰をするとき、勤務時間への不安が最も多く聞かれます。特に子育て中の30代40代においては一番心配される要素でしょう。結婚や出産しても働き続けたいという思いはあるけれど、家庭と両立することが難しい、という実態がみえてきます。
【参考】厚生労働省 潜在保育士ガイドブック 潜在保育士の実態について 12ページ「復職するにあたっての不安要素:職場環境」
さまざまな理由で、離職を選ぶ保育士がたくさんいることをみてきました。離職しても再び保育の仕事を選ばない潜在保育士の増加は、保育士不足にもつながっています。しかし、潜在保育士の多くの方は、就業を希望しない理由が解消されれば保育士として働きたいと思っているのです。
では、就業したくない理由を解消する方法はないのでしょうか?その答えの1つが、正社員以外の働き方を選ぶ方法です。派遣保育士やパート・アルバイトとして働くことで、働きたいと思える環境や条件を得られることもあります。保育士の資格を活かせる、派遣やパート・アルバイトとして働く選択肢をご紹介いたします。
派遣保育士とは、保育士の人材派遣会社に雇われ、派遣会社と契約をしている保育園へ派遣される保育士です。正社員保育士と同じように保育にあたりますが、雇用主はあくまでも派遣会社。給与も派遣会社から支払われます。
派遣保育士は残業や持ち帰り仕事が少なく、残業があった場合には必ず残業代が支払われます。また、正社員保育士と比べると任せられる事務仕事などが少なく、担任の補助業務が多くなります。勤務時間や仕事量に関する負担が少ないことがメリットです。また、人間関係などの悩みにも、派遣会社が解決の手助けをしてくれることもあります。給与は時給制で、賞与がないことがほとんどです。年収は正社員より低くなることもありますが、残業や持ち帰り仕事が少ないことを考慮すると、正社員の給与を時給換算した場合よりも、給与が低いとは限りません。短時間勤務やブランクがあってもOK、シニアの方歓迎など、自分が希望する勤務条件の保育園を派遣会社が紹介してくれるので職場選びも安心です。一ヶ所の保育園で継続的に働けるのは最長3年までという定めがありますので、同じ場所で働き続ける自信がないという方にもおすすめです。
保育士不足を解消するためパートやアルバイトの保育士が増えてきました。保育園に直接雇用され、早朝や延長保育、日中の忙しい時間や希望する曜日のみなど、正社員と比べて自由に勤務時間や曜日を選んで働くことが可能です。園が求める時間や曜日と合致する必要がありますが、1日2時間ほどの短時間のパート保育士を求めている場合も多いので、体力面に自信がなくても大丈夫。仕事内容は子どもの保育や環境整備など、正社員の補助的な役割です。
給与は時給制で、基本的に賞与の支給はありません。正社員ほどの収入は見込めませんが、負担が少なく働くことができますよ。ブランクがあり、フルタイムで働く自信がないという場合には、まずはパート勤務から始めてみてもいいでしょう。園によっては、パート勤務から正社員に移行できる場合もあります。
保育園の利用者は年々増え、保育士は今後ますます需要の高まりが予測されます。社会全体をみても、潜在保育士の問題はすぐにでも解消されるべきでしょう。しかし、保育士には子どもの命を預かる重圧や低賃金、長時間労働の問題が根深くあり、潜在保育士が復帰に踏み切れない理由が見えてきます。
しかし、正社員という働き方にこだわらずに、新たな働き方に挑戦することで、その不満が解消されることもあります。自分らしい働き方で、保育士として活躍する道を探してみてはいかがでしょうか?保育は子どもの成長を目の当たりにできる、やりがいのある仕事です。新しい働き方で、保育の魅力を再確認するという方法もありますよ。
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