労働者派遣法の改正により、平成24年10月1日より「日雇い派遣」が原則禁止になりました。規制された理由は、違法な業務への派遣や労働災害の発生が問題視されるようになったためです。当時「派遣切り」という言葉が話題になったことから、不安定雇用やワーキングプアの増加を阻止する目的がありました。
今回は、この法律で定められた日雇い派遣の禁止内容および例外について理解し、短期・単発で働くための条件について考えていきましょう。
ここでいう日雇い派遣とは、「派遣会社との労働契約期間が31日に満たないもの」を指します。日雇いと聞くと1日限りの仕事というイメージを持ちやすいですが、そうではありません。
日数でいえば、契約期間が1日~30日までの労働が「日雇い」となります。つまり契約期間「1カ月」の場合、1カ月の日数が30日以下の2月や4月に契約すれば日雇いとなりますが、1カ月の日数が31日ある7月や12月の場合は日雇いではないということになります。
短い期間で終了する労働契約は責任の所在が不明確になりやすく、労働者保護法の観点から最低31日以上の契約を結ぶことが義務付けられました。
このような取り決めにより雇用の安定が図られているのですが、実は日雇い派遣が全て規制されるわけではありません。「原則禁止」というからには例外があります。
職業の中には、その専門性から短期間の就業が一般的になっているものが26種類あり、かつては例外として日雇い派遣が認められていました。例えば、ソフトウエア開発やデモンストレーション、広告デザイン、アナウンサー、テレマーケティング、セールスエンジニアなどです。これらは派遣期間制限がなく、日雇い派遣はもちろん、同一派遣先で3年以上の継続勤務も可能でした。
ただし、2015年10月に労働者派遣法はさらに改正され、この「専門26業務」という枠が撤廃されて「原則禁止の例外」ではなくなりました。2017年3月時点ではまだ移行期間ということもあり、現状では一部改正前の状態が継続されているものもあります。しかし、今後は全ての業務において派遣期間の制限がかけられることになります。
実際のところ派遣期間が短い仕事は存在しており、全てを規制してしまっては働き手が確保できません。そこで、下記のいずれかにあてはまれば、制限を受けない対象者として日雇い派遣で働くことができます。
1.60歳以上の方
2.雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる「昼間学生」)
3.生業収入が500万円以上で副業として従事する方
4.世帯収入が500万円以上で、自身の収入がその2分の1以下の方
もちろん、自己申告だけで日雇い派遣に就業できるわけではなく、基本的に公的証明書による確認が必要です。1は免許証や健康保険証など生年月日が記載されたもの、2は学生証、3は源泉徴収書や課税証明書など自身の収入が分かるもの、4にいたっては世帯全員の収入証明書の提示が必要です。
なお、3にある「生業」とはメインで就業している職業のことです。複数の仕事を掛け持ちしている場合、最も収入の多い職業が「生業」になります。そのため、合算で500万円を超えていても、生業収入が500万円に届いていないという状態では日雇い派遣で働けません。
日雇い派遣は学生や高齢者、主婦などにとっては働きやすい仕組みといえるでしょう。一方で、独身かつ若い世代では、自身の生業収入が500万円以上あるケースは限られており、派遣で副業をすることが難しくなっています。
とは言っても、日雇い労働そのものが禁止されているわけではありません。派遣ではなく直接雇用(アルバイト・パート)であれば、日雇いで条件なく働けます。
そのため、最近では「日々紹介」という仕組みを取り入れている派遣会社が増えてきました。これは、短期・単発の求人を出している企業の情報を公開し、希望者に直接雇用を推進する仕組みです。両者が合意すれば企業と希望者の間で労働契約が成立し、給料はその企業から払われることになります。
労働者派遣法の改正で、さまざまな条件が増えて複雑化しているように見えるかもしれません。しかし、それは労働者を守るための仕組みであり、雇用の安定を図る手段でもあります。
確かに、派遣社員としては働く条件が厳しくなった面はありますが、直接雇用による短期のアルバイトは現在でも多くあり、派遣会社であっせんしています。派遣会社も雇用形態を工夫しながら、多くの人々に求人情報を提供しているのです。
新しい就業先を探すときは、まず自分がどのように働くことができるのかを調べ、理解することが必要です。一通り調べても、自分が日雇い派遣として勤務できるかどうか分からない場合は、派遣会社に相談するなどして確かめることをおすすめします。
(c) 2025 LIKE Staffing, Inc.