保育をするにあたって保育指導案は必要な書類です。そのため、保育士は保育指導案を必ず作成しなくてはなりません。しかし、指導案をどのように書けばよいのか、迷ったり、悩んだりする人も多いのではないでしょうか。
今回は、保育指導案の書き方を「ねらい」や「内容」などの項目に分け、具体的に解説いたします。作成するときのコツやポイントもお伝えいたしますので、ぜひ参考にしてください。
保育指導案とは、日々の保育においてどのように指導するか、また、子どもたちによりよい保育を行うための目標や活動を計画したものです。そして、保育指導案は年齢や発達に合ったものでなくてはなりません。
保育所保育指針においても指導案について、「保育所は、全体的な計画に基づき、具体的な保育が適切に展開されるよう、子どもの生活や発達を見通した長期的な指導計画と、それに関連しながら、より具体的な子どもの日々の生活に即した短期的な指導計画を作成しなければならない」と記してあります。
ではここから、長期的な指導計画と短期的な指導計画について解説していきます。
【参考】保育所保育指針 第1章 総則 3保育の計画及び評価 (2)指導計画の作成 p9
保育所保育指針では、保育指導案は2種類用意することが書かれています。その1つが長期指導案です。長期指導案には年間計画と月案が含まれます。大切なのはこの2つは全体的な計画を意識して書くということです。まずは全体的な計画をよく理解した上で、この2つの指導案に取り組むことが求められます。
これは「年間指導計画案」のことで、年度の始めに1年を見通して立てる指導計画です。行事などに合わせた活動も設定していきます。長期的な見通しをもって保育指導案を書くことが大切です。1年後の子どもの成長をどのようにイメージできるかがとても重要になってきます。年案は主に主任やリーダーによって作成されることが多いようです。
月ごとの目標やねらいを設定し保育内容を決めるものが月案です。ただ、目標やねらいを設定するのではなく、それを達成するための保育内容を考えなくてはなりません。そのため、前月の子どもの姿を大切にすることが必要です。
長期的な視野で書く長期指導案に対して、より具体的で今現在の子どもの発達や生活に合った目標や活動について書くものが短期指導案です。短期指導案を書くにあたっても、全体的な計画をいつも考慮しておく必要があります。
園が求めている全体的な計画から大幅に外れていないかどうかを確認しながら書くようにします。そうすることで、全体的な計画がより保育に生かされてきます。
月案で設定した計画をさらに具体的な保育内容にするのが週案です。天候なども考慮しながら、遊びの見通しも立てやすいことで、イメージしやすい指導案ではないでしょうか。週単位で目標や「ねらい」がゆるやかに達成できるような週案が良いでしょう。
保育のスケジュールを時系列で記入します。環境構成や保育者の援助についてより具体的に記入することが大切です。保育の活動におけるあくまでも計画案であるので、日案にしばられないことが大切で、自分の「ねらい」に子どもの活動を寄らせない保育が必要です。
ここまで保育指導案の種類についてお伝えしてきました。では実際に、保育指導案の内容にはどのようなことを記載する必要があるのでしょうか。ここでは指導案の内容を具体的にご紹介いたします。
保育指導案では必ず「ねらい」を書く必要があり、クラスの状況や子どもに応じた発達に合った「ねらい」が必要です。保育所保育指針の「ねらい」から取り出してもよいでしょう。保育指導案を考えるにあたって全体的な計画をもとに明確な「ねらい」をもつことが大切です。
「内容」には、ねらいを達成するための具体的な事柄について書く必要があります。「保育所の生活の仕方に慣れ、きまりの大切さに気付く」という「ねらい」ならば、「食事やおやつの前に手を洗おうとする」「廊下では走らないようにする」などが内容になります。
内容にはこのようにねらいに合った具体的な事柄を書くことが大切です。
環境構成には、「ねらい」や「内容」を達成するためにどのように環境を構成すべきかを書く必要があります。環境構成では保育者や身近な大人などの人的な環境や、子どもの周りにある物に対する物的環境を考える必要があります。手を洗う内容ならば、せっけんやタオルの準備、手を洗いたくなるような清潔な水回り、保育者の声かけなどが環境構成になります。
「ねらい」に向けてどのように子どもたちが活動するか予想される姿を書きます。普段の様子を知っている担任ならではの視点が大切です。手を洗う内容に沿って、環境構成の整った場所での活動では、気持ちが良さそうな子どもの様子や、それにともなう保育者への言葉などが予想されるはずです。
活動内容に合った保育士の援助を書いていきます。うまく手を洗えない園児の前でさりげなく保育士自身が手を洗ってみせたり、子どもからの言葉に共感する言葉かけをしたりするなど、あらかじめどのような援助が必要であるかを記入しておきましょう。
書いたことを絶対に行う必要はありません。大切なのはそのときの子どもの様子に応じた援助をすることを心がけることです。
指導案とはどういうものかを解説してきましたが、ここからは具体例を取り上げながら保育指導案の作成について解説していきます。どのように書けばよいのか参考になるはずです。ぜひ自分の保育指導案作成にお役立てください。
年案の多くは4期に分けて作成します。1期は4月から5月、2期は6月から8月、3期は9月から12月、4期は1月から3月です。4期を通してねらいを達成するために保育の取り組みを継続して行う必要があることを忘れないようにします。さらに、園の保育理念や保育指針で書かれていることとの整合性をチェックしましょう。
月案では年案を意識して保育指導案を書いていく必要があります。ひと月を1週から5週に分けてそれぞれの週における「ねらい」や「内容」を書いていきます。もちろん先月の子どもの様子や反省点なども考慮する必要があります。ただし、年案としての「ねらい」から外れないようにすることが大切です。
月案をもとに、より具体的に必要な活動や保育者の援助、環境構成を書きます。月曜日から金曜日までの活動計画を「ねらい」に沿って立てていくイメージです。そのときどきの関心に合った活動を通して「ねらい」を達成していくように書いていきましょう。
その日の計画を時系列で記入します。その日の「ねらい」を設け、それが達成できるような保育内容にします。外遊びをするにしてもそこに明確な「ねらい」を設ける必要があります。外遊びを通して人間関係に「ねらい」をもつとするならば、どのような人間関係なのか気付かせる必要があるのか、
また、保育士の援助の方法や環境構成についても具体的に書いておきます。そのことで、自分の保育はどこに向かうべきかを示しておけます。
実際に保育指導案を書くにあたっていくつかのポイントがあります。ここではどのようなポイントがあるのかを年齢別にご紹介いたします。
0歳児の保育のねらいは、「健やかに伸び伸びと育つ」「身近な人と気持ちが通じ合う」「身近なものと関わり感性が育つ」の3つです。これらのどれもが乳児にとって大切なねらいです。
年案ではこの3つの「ねらい」を、月案ではこの3つの「ねらい」を発達に応じて記入していきます。日案などでは「ねらい」に対しての具体的な方法を記入していきましょう。
たとえば体の動きや表情、発声などにより保育士らと気持ちを通わせようとするという「ねらい」であれば、子どもの発話に丁寧に返答し、温かい関わりを持つ、一緒に歌や手遊びをしながら楽しさを共有するなどが「内容」になります。
予想される子どもの姿として、笑顔を見せる、多くの喃語を話すなどでしょう。さらにそのための環境構成として、静かな保育室や落ち着いた空間づくりなどが挙げられるはずです。
【参考】保育所保育指針 第2章 保育の内容 1乳幼児に関わるねらい及び内容 p17
1歳児から3歳児未満の場合、保育士との身体的な関わりをともなうケアの場面が多いため、何かをしてあげるといったことが内容になってしまいがちです。しかし、そこから得られる教育的な価値についても「ねらい」として考えておく必要があります。
たとえば、全身を使う遊びを楽しむことが「ねらい」の場合、保育士が一緒に何らかの活動をすることを「内容」としてしまう場合があります。しかし、体の動かし方を自分で見つけられるようにすることや援助や環境を整えることで「内容」が変わってきます。小さなことでも自らの力で成し遂げることができるような「内容」にすることが大切です。
安心して見守ってくれる保育士がいることで挑戦できることもあります。何を大切にしたいのか園の理念とともに考えてみてください。
何でも自分でやりたい2歳児にとっての「ねらい」はどういうものがふさわしいか考えておく必要があります。それに、やりたい2歳児もいればやってもらいたい2歳児もいます。
この年齢も月齢や発達によって個別的な対応がとても大切です。その子どもに合った援助や環境構成が大切であることと、子どもの興味に合ったものを用意しておくことが必要です。そして、それが内容になってきます。コーナー遊びなどを取り入れる内容であってもよいでしょう。
しかし、応答的な関わりや話しかけにより自ら言葉を使おうとする「ねらい」に対して、自分でやらせようとするといった内容は不適切です。その子どもが何を求めているのか子どもへの理解は保育士の専門性であることを意識しましょう。
体の自由が感じられる3歳児にとって多くの経験が学びになります。そのため「ねらい」をもった活動も多く、年案を意識しながら活動する必要があります。
保育園の生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わうなどの「ねらい」に対して、どのような活動がふさわしいのでしょうか。保育園での生活に慣れるところから一歩進んで楽しむためにどのような「内容」が必要になるのか、年案との整合性はあるのか、しっかりと確認するとよいでしょう。そのための環境構成によって子どもたちは自発的にねらいを達成することができます。
人間関係において、共同的な取り組みができるようになってくる年齢です。子どもたちの発達に応じて「ねらい」を柔軟に変えながら、年案に近づけていく必要があります。「内容」から「ねらい」を導き出すのではなく、あくまでも「ねらい」に沿った遊びの「内容」の提案が必要です。
共同的な遊びを「ねらい」にするのならば、ごっこ遊びでも連携のとれた内容にする必要があります。そのための環境構成はただ単に道具や用具を提供するだけではなく、知識的な提供も含まれます。保育者の援助方法も考えつつ、主体的に子どもたちが遊べることを大切にする指導案にしましょう。
保育園生活の最終学年である5歳児の「ねらい」には、保育所保育指針に記されている「10の姿」についても触れていく必要があります。これは幼児期の終わりまでに育って欲しい姿であり、小学校への架け橋へとなるものです。
年案にもこのようなねらいを入れることが大切ですし、保育士もより具体的に活動の「内容」を考えることができるはずです。「ねらい」を持って活動を行うことで小学校へ提出する要録に書くことにも豊富な材料がそろうはずです。
大切なことは活動にはいつも「ねらい」が必要であることです。
【参考】保育所保育指針 第1章総則 4幼児教育を行う施設として共有すべき事項
アセスメントは「評価」という意味をもちます。保育指導案は書いて終わりのものではありません。特に週案や日案に関してはその指導案に対しての振り返り、つまり評価が必要ということになります。その評価をもとに次週および明日の保育指導案を作成していきます。
最初は時間がかかる作業かもしれませんが、少しずつ慣れてきます。ですが、自分は指導案作成などの事務作業に向いていない、または時間を取られたくないなどと思っている人も多いはずです。
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