保育士は現代社会において多くの人に必要で不可欠な仕事です。にもかかわらず、「給料が安いのは当たり前」という声も少なくありません。どうしてそのような声が上がるのか、実際の給料はどうなのか知りたい人も多いのではないでしょうか。
今回は、保育士の給料が安いのは当たり前といわれる理由について解説していきます。さらに、実際の給料についてご紹介し、保育士が給料を上げるための対処法や対策についてもお伝えいたします。今、保育士で給料のことで悩んでいる人やこれから保育士を目指す人はぜひ参考にしてください。
保育士の給料が安いのは当たり前なのでしょうか。また、なぜそのようにいわれてしまうのでしょうか。保育士の仕事は専門職にもかかわらず、このような声が上がってくるのにはそれなりの理由があるのかもしれません。ここではそのような声が上がる原因をご説明いたします。
保育士資格が誰でも簡単に取得できるものと思われています。さらに、保育士の仕事内容への理解が乏しいと、保育士が誰にでもできる仕事だと思われてしまいます。そのため、給料が安いといわれてしまうようです。
実際のところ保育の仕事には専門性が必要です。保育士は子育てをしている親の役割とは違う役割を担っています。それは、子どもの発達を誰よりも知っているという点です。赤ちゃんの発達、その順序、乳児や幼児についても同じです。
発達といっても身体だけではなく、心の発達についても詳しく知っています。それらを客観的に観ることができるのが保育士という仕事なのです。経験だけでなく、経験を超えるくらいの知識を持ち合わせているのが保育士なのです。
保育士になるには保育者養成校を卒業するか、保育士試験を受験、合格する必要があります。それだけを聞くと、学歴などはまったく必要がないものと思われがちです。そのため、給料が安くても仕方ないと思われてしまうようです。
まだまだ学歴を重視している人がいる中で、試験合格だけで資格を取得できると言われることはとても残念です。子どもと関わり合いながら子どもの成長を見守る仕事である保育士は、偏差値の高さよりも人間性が必要です。人として人の成長を見守る保育士という仕事は、これからも人にしかできない大変重要な仕事なのです。
日本人による保育施設は明治23年に新潟で始まりました。その後、農業の繁忙期に合わせて開設するなどさまざまな形の保育施設が開かれました。しかし、今の保育施設とは異なり、保育ではなく、子守りをする場所としての認識であったようです。そのような名残もあり、保育士の仕事は軽視されやすく、給料が安くても仕方がないと言われるようになってしまいました。
しかし、実際には保育士は子どもの心に寄り添い、奉仕の気持ちがないと務まりません。保育にはマニュアルはありません。自分の時間を保育のために使っている保育士も多くいます。預ける側にとっては、このように真剣に保育に向かっている保育士に子どもをお願いしたいと思うのではないでしょうか。それにもかかわらず、保育士の給料は安いと思われてしまっています。
では、実際には保育士の給料はどうなっているのでしょうか。多くの人に安いと言われている保育士の給料の実際の金額を解説していきます。
令和4年の賃金構造基本統計調査によると一般的な職業の平均月収は約31万円となっています。単純に12ヵ月分で計算すると約372万円となります。
では保育士の年収はどうなっているのでしょうか。保育士38.8歳、勤続年数8.8年の場合、平均月収は約27万円です。年収にすると約324万円です。一般的な職業と比較してみると安いと思われがちですが、一般的な職業の女性の平均は約26万円のため、女性保育士は一般の女性の給料より高いことが分かります。さらに、ここに施設ごとに決められたボーナスが加算されますので、実は思っているよりも保育士の給料は高いことが分かります。
【参考】
厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査「一般労働者の賃金」
額面では高めという結果でしたが、手取りになると約20万円程度となります。こんなに頑張っても20万円程度かと思われる保育士もいるかもしれません。しかし、ここ最近保育士の給与を改善するために国による施策が行われています。そのことで保育士の平均年収は5年間で約30万円アップしています。ではどのような施策が行われているのでしょうか。
国の施策の1つが処遇改善加算です。これは保育士の定着を目指した施策です。この施策によって給料が上がり、保育士の離職を防ぐという目的があります。
処遇改善にはⅠやⅡなどの種類があり、その条件に合えば保育士の給料に一定の金額が加算されていきます。できるだけ多くの保育士に処遇改善が加算されるように、幅広い条件が用意されています。また、保育施設はより加算ができるように努める必要があります。
多くの自治体では、保育士が賃貸の物件を借りるときに支援事業を行っています。最大月82,000円の補助金を受け取ることができます。家賃の負担が少ないことはメリットも大きいはずです。
ただし、採用から7年間という決まりがあります。借り上げ制度が終わった後でも、園独自の家賃補助や、園がもっている寮などに入ることで出費を抑えることができます。寮といってもさまざまで、アパートのようなタイプを寮と呼び、家賃の2割から5割程度の負担で済む場合もあります。
【参考】厚生労働省 令和5年度保育関係予算案の概要(p.7)
ここまで保育士の給料の実際についてお伝えしてきました。ここ数年で保育士の給料は少しずつではありますが上がってきています。しかし、満足できるといった状態ではありません。ではどうして保育士の給料は安いのでしょうか。
ここでは保育士の給料が安い理由をお伝えしていきます。安い理由を知ることで、給料を上げる対策もしやすくなるはずです。ぜひ参考にしてください。
保育士の給料は主に国からの補助金で賄っています。もともと保育園は利益を出す施設ではないため、国からの補助金で給料をやりくりしているということになります。さらに、この補助金は国で決めた配置基準での人件費と考えられているため、保育士の数を増やし担当制などを導入し、きめ細やかな保育を行おうとすると、人件費を節約しなくてはなりません。
その上、水道光熱費、給食費などの必要経費も補助金の範囲内でおさめなければなりません。このような予算の中で高い給料を出すことは難しく、どうしても給料が安いということになってしまいます。
保育士は誰にでもできる簡単な仕事という社会的評価は、国の補助金にも影響を与えています。社会的な評価を上げるために、保育士の専門性の高さを社会に伝えていく必要があります。
高い専門性を持った保育士であるにもかかわらず給料が安ければ、保育士のスキルと給料が比例しません。給料は保育の質と対価である必要があります。また、その保育の質には保育内容以外にも、働き方も関わります。有給が取りやすい、自分のやりたい保育が行えるなど、自分の保育に対して適切な評価をしてもらうことが必要です。
このように保育の質や働き方は複雑です。保育士は簡単な仕事だという思い込みは、保育士の社会的評価を下げる原因となっています。
保育園に保育士はたくさんいても実際に正規雇用の保育士は少ないということも多々あります。できるだけ正規雇用の保育士を増やし、働く環境をよくしておくことも大切です。
働く環境がよくなることで、休みが取りやすくなり、ノンコンタクトタイムを取ることもできるようになります。職場での満足感を得ることでモチベーションが上がり、給料に対しての満足感も得ることができるでしょう。
では実際に、非正規雇用にはどのような種類があるのかを説明していきます。
労働時間、労働日数が短い働き方です。忙しい朝だけや夕方だけ働く場合もあります。さらに、決まった曜日だけ働くこともあります。
保育園との契約で働く保育士のことを指します。一定期間でしか働かないため、働く人と働いてもらう人の間に温度差が生まれることもあります。契約期間が終われば雇用も終了になります。
派遣会社から派遣される保育士のことをいいます。派遣会社との契約のため、保育園への要望や働き方についての相談も派遣会社を通して行います。
給料の安い現状や、その理由についてさまざまな角度からお伝えしてきましたが、これらの情報を知ることで給料の低さを打開し、給料を上げる方向に考えをシフトしていけるようになります。
主任や園長になると役職手当によってそれだけ給料も高くなります。また、処遇改善によって主任や園長以外にも新たな役職が新設されています。副主任や専門リーダーは月額40,000円、職務分野別リーダーは月額5,000円支給されます。
若手の保育士も中堅の保育士もこのキャリアアップ制度を利用することが可能なので、主任や園長になるまでまだまだ時間がかかると考えている保育士にとってこの取り組みは大きなチャンスとなります。
この制度を利用するためにはある一定の条件をクリアする必要がありますが、ぜひ手を挙げてこの制度を利用してください。
保育園によっては副業可能という施設もあります。本来の保育の業務に差し支えなければ、副業をしながら収入を増やすということも可能です。もちろんお勤めの園に副業可能かどうか確認する必要があります。さまざまな副業がある時代です。興味のある方はぜひ調べてみてください。
給料の高い違う園に転職することも給料を上げる方法の1つです。ただし、給料が高くても残業が多かったり、休みが取りづらかったりなどの問題がある場合には本当にそれでよいのかよく考えてみる必要があります。自分にとってどのような働き方が合っているか、何を大事にするのか、自分の生き方を自分自身がよく知っておくことが大切です。
夢だった保育士の仕事でも、さまざまな理由であきらめなくてはならないときがあります。その理由の1つが給料かもしれません。でも、保育士は素晴らしい職業であることに変わりありません。
悩んだり、困ったりしたときはぜひジョブトル保育にご相談ください。あなたにとって充実した保育の仕事ができる場所を私たちは探すことができます。ぜひジョブトル保育で自分の思いをかなえられる保育をしてみませんか。
(c) 2025 LIKE Staffing, Inc.