新型コロナウイルスが爆発的な感染力を見せたことで、感染症対策を取るようになった保育園は多いのではないでしょうか。しかし具体的な対策をどうやって取るべきか悩まれた保育士も多かったはずです。
今回はそのように悩まれた保育士のために、保育園でできる感染症対策を紹介いたします。また、新型コロナウイルス以外の広まりやすい感染症について解説するとともに、広まってしまう原因についてもお伝えしていきます。
感染症とは病原体が体に侵入して症状がでる病気のことです。病原体は細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などがありますが、保育園内では感染した人から周囲に広がっていく水平感染で広がっていきます。そして、この水平感染には以下の4つの種類があります。
ではこれらの感染は具体的にどのような感染経路を指すのでしょうか。ここでこれらの感感染症の感染経路について説明いたします。
感染者や感染源に直接接触して感染することです。
咳やくしゃみなど、飛び散った飛沫を吸い込むことにより感染することをいいます。
空気中を漂う微細な粒子を吸い込むことにより感染しますが、マスクをしてもなかなか防げません。
汚染された水や食品などを介して感染します。食中毒もこの感染にはいります。
では実際に保育園で広がりやすい感染症にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは感染症の中でも保育園で広がる感染症についてお伝えします。保育士のみなさんが一度は聞いたことがある名前ではないでしょうか。
さらに、保育士を目指している方にとってはこれらの感染症を知っておくことで素早く感染症へ対応できます。ぜひ覚えておいてください。
飛沫感染や接触感染によって広がっていく感染症です。高熱になり、風邪の強い症状がでます。その他、関節痛や筋肉痛が見られます。今までは冬に流行していましたが、夏に流行ることもあるため一年中感染に気をつけなければなりません。治るまで約1週間かかります。登園基準もあり、発症後5日間を経過するか、解熱後2日を経過していることが決まっています。
冬に流行り、熱や喉の痛みがあるため風邪だと考えていたら溶連菌だったという方も多いのではないでしょうか。こちらも飛沫感染や接触感染によって広がります。完治までの目安は21日といわれています。溶連菌に対応した抗菌薬を飲む必要があります。
細胞に寄生する小さな細菌マイコプラズマ・ニューモニアによる感染症です、子どもから大人まで一年を通して感染するといわれています。飛沫感染、接触感染、どちらの感染経路によっても発症します。発熱や頭痛、乾いた咳の症状があります。重症化すると髄膜炎や脳炎などもあります。
接触感染、飛沫感染、食中毒による感染と、いくつかの感染経路があります。嘔吐や、下痢などがあり、家族内での感染も多くみられます。3日間ぐらいで快方に向かいますが、食事を取れないことで体力が落ちてしまう場合が多いようです。食事が取れるようになってきたら、登園することも可能でしょう。
飛沫感染や接触感染によって発症します。発熱とのどの痛みとともに口内粘膜に水疱性の発疹が見られます。そのため、小児科に行くことで、すぐに発見できます。水泡の影響で食事を取ることを嫌がります。水泡が改善されてくると食事が取れるようになり、登園できるようになります。
【参考サイト】マイコプラズマ肺炎 東京都感染症情報センター
感染症は園児にどんどん広がっていきます。ここではどのような場合に感染が広がってしまうのか、保育園での生活の場面をお伝えします。ご自分の働いている園での子どもたちの生活を思い出しながら、広がる原因について考えてみてください。
保育園は集団生活の場です。たくさんの子どもが異年齢で遊ぶ機会も多いはずです。さらに遊ぶ時の距離を保つことが難しいために近い距離での関わりが多くなります。そのことで、飛沫感染や接触感染が生じやすいのではないでしょうか。特に、食事の場面や昼寝の場面では感染が広がりやすいといえます。
乳児は発達の段階で口に物を入れて、さまざまな学びをしています。毎日の消毒や拭き取りを行っていても、どうしても玩具を共有してしまう場合もあるはずです。そのことで感染症がひろがってしまう場合もあります。消毒の徹底も大切ですが、子どもの遊びも大切なため、その日の体調をよく観察するなど、遊びとのバランスを考える必要があります。
保育園の園児にとって、感染症について大人のような認識はありません。特に乳児クラスの子どもたちは日々の生活において感染症に注意して生活する意識はほとんどないのではないでしょうか。そのような子どもたちを守るのは大人の役目であることを保育士は自覚しておく必要があります。
生後6ヵ月くらいまでは母親からの免疫があるため、感染症にかかりづらいといわれています。その後は免疫がだんだんと減っていくために、感染症にかかりやすくなってしまいます。風邪をひくとその風邪に対しての免疫はできますが、それだけでは十分な免疫にはなり得ません。そのためにさまざまな感染症にかかりやすいということになります。
ここまで感染症についてさまざまな情報をお伝えしてきましたが、ここからは感染症をどう防ぐかについて「こども家庭庁」のガイドラインを紹介するとともに感染症予防の方法について解説いたします。感染症を防ぐ具体的な方法はすぐに保育園で役に立つはずです。ぜひ参考にしてください。
「こども家庭庁」の保育所における感染症対策のガイドラインは以下の通りです。
このガイドラインにより保育士は感染症に対して正しい知識を持つと同時に子どもたちに対して最大限の感染予防をすることが必要といわれています。では実際にどのような感染予防が効果的で、必要なのでしょうか。
ガイドラインに書かれている最大限の予防を保育園でどのように行えばいいのか、ここではその工夫についてお伝えします。これらのことは多くの園で行われていることと同じかもしれませんが、自分たちの行っている感染予防についてもう一度見直すよい機会になるはずです。
幼児のクラスでは日々の生活のなかで手洗いとうがいをすることがあるはずです。ただし、その手洗いとうがいが正しい方法なのかを、保育士は確認する必要があります。そのためには保育士自身が正しい方法を身につけ、子どもたちのモデルとなって教える必要があります。
うがいなどはご家庭でも練習してもらうお願いをする必要もあるでしょう。さらに水場などに、手洗いやうがいについてのやり方が分かる絵などを貼っておくことも必要です。
さらに紙芝居や絵本、ペープサートなどを使って予防についての知識を楽しく学べる機会を作ることも大切です。また、乳児のクラスでの手洗い、うがいはなかなか難しい場面も多いのではないでしょうか。手洗いの代わりにタオルで拭く、うがいの代わりにこまめに水分を補給するなどの工夫も必要です。難しいからできないというのではなく、それに代わりに出来ることを見つけていきましょう。
乳幼児にとってマスクの習慣化はとても難しいはずです。しかし、子どもが難しくても、感染症が流行っている場合、保育士はマスクをして感染予防に努めることが大切です。また、園内での感染がある場合には検温を複数回行うようにしましょう。さらに登園前の家庭の様子についても詳しく知っておく必要があります。そのためにも、朝に検温の協力をお願いしてもよいでしょう。
タオルの共有は感染症を広げる原因のひとつです。最近ではタオルの代わりにペーパータオルを使う場合が多いようです。特に接触感染による経路で広がっていく感染症はタオルの共有によって、どんどん広がっていきます。保育士がどのような経路でどんな感染症が広がっていくかを知っていると感染予防に大きな力になります。
換気は感染症対策において、一番簡単にできる方法です。ただし、向かい合った窓を開けることを意識しないと、部屋の中が十分に換気できない場合もあります。換気扇などを使ってさらに効果的に部屋を換気することもよいでしょう。換気についてのマニュアルを作って、頻度は1時間に一度、また、子どもの人数においてどのように換気するのがいいか共通理解してもよいでしょう。
アルコール消毒を行っている園も多いはずです。その場合、手だけでなく、子どもたちがよくさわる場所も消毒しておくとよいでしょう。おもちゃだけでなく、机、ドアノブ、階段の手すりなども消毒しておくことで感染の拡大を防げます。ぬいぐるみなどは洗濯も視野にいれて対処してみましょう。
【参考サイト】こども家庭庁 2018年3月 p1
病原体が体に侵入しても症状が現れない場合があります。感染症になるかならないか、それは病原体の感染力と体の抵抗力とのバランスで決まるといわれています。子どもたちが感染症に負けない丈夫な体をつくれるように保育士は子どもたちと身体をたくさん使って遊ぶことを忘れないようにしましょう。
【参考サイト】国立国際医療研究センター
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