子どもを預かる保育士にとってリスクマネジメントは非常に大切です。しかし、リスクマネジメントについて具体的に知っている保育士は少ないのではないでしょうか。
今回は保育園における保育のリスクマネジメントについて、実際にあった事故の事例をもとに事故リスクをまとめながら解説いたします。また、あわせて保育園におけるリスクマネジメントの進め方を説明いたします。ぜひ参考にして、安全、安心な保育園を目指してください。
リスクマネジメントという言葉は知っていても実際にどのようなことを指すのか、具体的に知っている保育士は少ないのではないでしょうか。リスクマネジメントの言葉の意味は「危機管理」のことを指します。
危険な状況を予測して、それが起きないように管理していくことがリスクマネジメントです。また、リスクマネジメントは園全体で行うことが前提です。事前に保育士同士がリスクに対する対応について話し合っておくことがリスクマネジメントの第一歩です。時間がない保育士にとってどうしても見過ごしがちな危険について考えることは子どもたちの命を守ることにつながります。
リスクマネジメントが子どもたちを守るうえで必要なことはわかっていても具体的にその必要性について考えたことはありますか。ここではリスクマネジメントがなぜ必要なのかを説明いたします。リスクマネジメントがいかに大切かを再考するきっかけにしてください。
子どもは活動中にどうしてもけがをしてしまうことがありますが、園全体がリスクマネジメントに取り組んでいることによってその後の対応に違いがでてきます。もしリスクマネジメントの取り組みをしていないことによって、重大な事故が起きてしまったら、子どもの命や健康な身体以外にも大きなものを失ってしまいます。それは保育園の社会的な信用です。
信用を失うと、保育園が閉鎖する事態にもなる可能性があります。最近ではSNSなどでの非難中傷もあるため、通園している子どもたちにとっても大きな傷になってしまうでしょう。リスクマネジメントを怠ったことで失ってしまうものが大きいということを忘れないようにしましょう。
保育士は専門職です。専門職というのは、経験だけではなく、同時に保育の知識も必要となってきます。「よくあることだから」「今まで大丈夫だった」などの個人の経験を主観的に考える状況が大きな事故を引き起こすことになります。
保育園で働く全員の職員が、本当によくあることなのか、今まで大丈夫だった理由は何か、など、話し合いをもとにリスクマネジメントを考えることが大切です。経験年数に関わらず、全職員がオープンにリスクマネジメントについて話し合える環境が大切です。経験だけでなく、知識も十分に持ち合わせているのが保育士なのです。
子どもをとりまく環境は日々変化しています。そのため、保護者の意識も変わってきています。保育士にとって、たいしたことはないと思うけがでも、保護者の捉え方はひとりずつ違います。許されない事態に陥ってしまう場合もあるかもしれません。
リスクマネジメントは子どもを守るものだけではなく、実は保育士や園自体を守るものでもあります。もちろん、保育士に理解のある保護者もいます、せっかくのよい関係を壊さないためにもリスクマネジメントを徹底しておくとよいでしょう。
ここまでリスクマネジメントの大切さをお伝えしてきました。では実際保育園にはどのようなリスクが隠れているのでしょうか。まずリスクを知ることはリスクマネジメントのうえでとても大切です。子どもにおけるリスクと保育園におけるリスクについて解説いたします。
子どもたちが保育園にいる間にどのようなリスクがあるのかチェックするためにも、子どもの周りにあるリスクについて知ることは有意義です。
子どもが遊んでいる場所に危険はないでしょうか。また、ケンカについても友達同士のケンカは止めてしまうことが必ずしもよいとは限りません。ただし、ケンカが行われている場所は適切でしょうか。子どもにとっては魅力的な場所も保育士が考える安全な場所ではない場合もあります。遊び場についてもチェックしておきましょう。
睡眠中のリスクは突然死です。そして、突然死として知られているのが乳幼児突然死症候群です。これは午睡の時間におきることが多く、はっきりとした原因はわかっていません。ブレスチェックなどの方法をとっている園が多いはずですが、リスクが大きく、早期において園全体としての取り組みが必要です。
災害に対して備えがあるかどうかチェックしてみましょう。もちろん、日頃の避難訓練についてその内容を確認しておくことも大切です。子どもたちの動きが悪い避難訓練であればそれは災害のときの大きなリスクになりかねません。
自分が勤務する保育園の運営においてはどのようなリスクがあるのでしょうか。リスクマネジメントを行う際には保育園自体のリスクも知っておく必要があります。
万年保育士不足を唱える保育業界ですが、優秀な保育士を確保するためには働きやすい環境の整備が必要です。さらに働きやすさが全ての職員に感じられるような仕組みづくりが必要です。
クレームを言ってくる保護者に対して、どのような対応がよいのか、マニュアル化されているでしょうか。どの職員が対応しても同じような受け答えになる必要があります。そのためにもクレーム対応についてのマニュアルが必要です。
保育園は思っている以上に地域とのよい関わりを実践する必要があります。万が一保育園に対して悪い印象をもたれてしまうと、移転や閉園になる恐れがあります。そうならないためにも普段からあいさつをすること、地域の行事に参加することなどがリスクを抑えるポイントです。
ではここからは具体的なリスクとそのマネジメントについて園内、園外、自然災害についてお伝えしていきます。
積み上げた椅子が倒れた事例があります。また、椅子だけでなく積み上げているものが崩れることは考えられることです。それが子どもの上に倒れてくる危険性をリスクマネジメントしなければなりません。
まずは物を積み上げないという意識をいつも持つこと、倒れそうなものは必ず固定して、動かないようにします。その際、ネジの緩みやヒモのたるみがないかをこまめに確認する必要があります。
園内に鋭角のものや、飛び出ているものがないように環境を整えるようにすることも重要です。子どもがぶつかったら大けがになるようなものがないか、保育士は子どもの目の高さでチェックするようにします。
また、乳児のクラスに多い誤飲に関しても注意しましょう。そのことで、窒息を起こしてしまうと大事故になりかねません。おもちゃだけでなく食事に関しても窒息を防ぐ大きさになるようにします。乳児の保育士は調理室のスタッフとの連携が大切です。
さらに調理スタッフとアレルギー対策についても毎日確認をするようにしましょう。アレルギーについては調理スタッフ、保育士の二重の確認を怠らないようにします。
遊具によって大きなけがが発生した事例があります。遊具がある場合、遊び方によってけがにつながらないか、見守るようにします。また、定期的に安全管理をし、安全点検を業者に頼むことも必要です。それ以外にも保育士は園庭がいつもと違う様子はないか、気を配ることが必要です。
夏になると熱中症の予防も必要です。帽子をかぶっていない子どもはいないか、水分は取れているか、具合の悪そうな子どもはいないかを保育士が声を掛け合って確認しましょう。
園外には物による大きな危険、子どもの遊び方による危険、子ども自身の健康に関する危険と、たくさんのリスクがあり、リスクマネジメントをしなくてはならない状況が多いことを覚えておきます。さらに、散歩に出かける場合にも、どのように円滑に散歩が行えるかを考えて計画しておくことが大切です。慣れた道だから、知っている場所だからなどという油断は禁物です。
いつ起こるか分からないのが自然災害です。大きな災害だけでなく、大雨のときや、風の強いときなどの対応も考えておく必要があります。ハザードマップの確認を園全体で行うことはもちろん、災害時にどのような対応をすべきかを話し合っておくことが大切です。避難訓練は必ず毎月行う計画を立てておくことも必要です。
ここまで、園でどのようなリスクがあるか、具体的なリスクとその対応についてお伝えしてきました。では園でどのようにリスクマネジメントについて話し合いをしていけばよいのでしょうか。
最後にリスクマネジメントの進め方について説明します。リスクマネジメントが園全体で行える状況になることが大切です。ぜひこの機会にリスクマネジメントについて園ですすめるようにしてみてください。
マニュアル作成にあたって職員全員の取り組みが必要です。もちろん園長や主任が責任者ではありますが、現場で中心的にリスクマネジメントを行うリーダーを決めるとよいでしょう。リーダーを軸に、リスクマネジメントグループを作成し、各学年からひとりを選出し、メンバーがリスクマネジメントの発信を積極的に行うことが大切です。このメンバーを中心にマニュアルを整理し、作成していきます。ではどのようなことを念頭にマニュアルを作成すればよいのでしょうか。
「ヒヤリハット」とは大きな事故にはならなかったが、事故につながる可能性があった出来事についての発見のことです。保育士が経験した「ヒヤリハット」を報告してもらうことによって今まで気づかなかったリスクについて保育士間での共有ができるようになります。
ただし、「ヒヤリハット」の報告がミスを責めるようなことにならないようにしましょう。そのためにリスクマネジメントのグループは保育士たちに「ヒヤリハット」の報告がリスクマネジメントにつながることを伝えていく必要があります。「ヒヤリハット」の報告によってどのようなリスクがあるかを分析します。多くの園では分析にSHELLモデルを使っています。
「ヒヤリハット」がどの要因に当てはまるかを分析し、事故を未然に防ぐために注意すべきことをチェックリストに書き起こします。チェックリストを園全体で共有することでたくさんの目が無駄なく安全の方向に向くことになります。チェックリストは客観的に園の環境を見ることにもつながります。経験に頼らないリスクマネジメントになるようにこのようなチェックリストを活用しましょう。
「ヒヤリハット」の提出や、その後のチェックリスト作成など、園全体での取り組みが必要です。事故の共有や声を掛け合ってチェックをすることで、園のリスクマネジメントについての意識が高くなってくることが期待できます。全員で取り組むことに意義があることを保育士全員で理解することが大切です。
保育園での活動は子どもの主体性を重視しています。リスクマネジメントはもちろん大切ですが、過剰なマネジメントは子どもの興味探求の気持ちを失わせてしまいます。けがをしないように環境を整備することはもちろん大切です。ただこれから未来を生きる子どもたちには多くの経験も大切だということを覚えておきましょう。
保育士が働きやすい環境にすることもリスクマネジメントのひとつです。自分に合った働き方は質のよい保育につながっていきます。
リスクマネジメントがしっかりとされている保育園で働きたい方はぜひ「ジョブトル保育」へお知らせください。「ジョブトル保育」は働きやすさを大事に考えています。保育のお仕事をお探しのかたはぜひ「ジョブトル保育」で自分に合った保育園をみつけてみませんか。
(c) 2024 LIKE Staffing, Inc.