少子高齢化が叫ばれ、子どもの数が減り続けている昨今、保育士の将来性について不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、保育士の需要は年々高まっており、人材を確保するため国や自治体も保育士の処遇改善に力を入れています。
そこで当記事では、保育士の将来性に注目。保育士の現状や需要が高まっている理由、さらに、保育士として今後一層活躍していくための大切なポイントを詳しく解説いたします。
厚生労働省より、2022年の出生率は前年より5.1%減の79万9728人で、1899年の統計開始以来はじめて80万人を下回り7年連続過去最少を更新したことが発表されました。
【参考】
NHK「去年の出生数は79万9728人 初めて80万人下回る 厚労省」
日本経済新聞「22年の出生数、初の80万人割れ 想定より11年早く」
少子高齢化が年々深刻化する今日の日本で、保育士の仕事に将来性があるのか疑問や不安を抱えている方も多いことでしょう。
しかし、保育業界では、少子化が進行しているなかでも保育士不足が続いているのが現状です。
2017年度末には約7.4万人の保育士不足が厚生労働省から公表されましたが、直近2022年10月時点でも保育士の有効求人倍率は2.49倍と、全職種平均の1.35倍を大きく上回る数値をたたき出しており、依然として人手不足の状況に陥っていることがわかります。
【参考】
【有効求人倍率とは?】
ちなみに、有効求人倍率とは、厚生労働省が全国のハローワークに集まった求職者数と求人数をもとに集計した「求職者一人あたり何件の求人があるか」を示す指標のことです。
上記計算式で算出され、「1」を上回るほど人を探している企業が多い(需要が高い)ことを意味します。
この保育士の人材不足(高需要)は今後も続くとみられており、保育士は少子化問題が叫ばれる今後の日本でも将来性の高い仕事だといえます。
ここでは、保育士の需要が高まる理由をさらに深く具体的に探っていきましょう。
近年、共働き世帯が急増しています。
厚生労働省が公表する「共働き等世帯数の年次推移」によると、共働き世帯数は年々右肩上がりに増加しており、2021年には専業主婦世帯数566万世帯に対して2倍以上の差をつける1,247万世帯を記録しています。
小さな子どもを育てる共働き世帯にとって、仕事をしている日中に子どもを預かってくれる保育施設は欠かせない存在です。
共働きがスタンダードな家族のスタイルとなってきている日本において、保育士へのニーズは今後ますます高まり、同時に保育士の需要も増えるといえるでしょう。
【参考】厚生労働省「図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移」
待機児童を解消すべく、国を挙げて次のような取り組みが行われてきました。
⇒「5年間で50万人分の保育の受け皿を確保」という政府目標に対し、約53.5万人分を達成
⇒「3年間で約32万人分の保育の受け皿を確保」という政府目標に対し、約26.1万人分を達成
国のこうした政策により、2015年以降は毎年1,000を超える保育施設が新設されており、保育士の働き口が増加しています。
さらに、2021年度から新たに実施されている「新子育て安心プラン」では、2024年までに約14万人分の保育の受け皿を整備することが目標に掲げられており、保育士の役割、保育士の需要は今後ますます高まっていくことが考えられます。
【参考】
厚生労働省「「待機児童解消加速化プラン」及び「子育て安心プラン」集計結果」
厚生労働省「「子育て安心プラン」及び「新子育て安心プラン」集計結果」
厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)」
保育施設の増設に加え、今日では保育士が活躍できるフィールドも広がっています。
共働き世帯が増え保護者の方の働き方が多様化したことから、認可保育園だけでなく認可外保育園でも定員オーバーとなる地域が多数発生し、2015年の「子ども・子育て支援新制度」によって新設された認定こども園のように、保育園以外にも子どもを預かってもらえる場所が求められるようになったためです。
保育士が保育園以外で活躍できるおもな施設は以下を参照してください。
⇒自社で働く従業員が就業中に子どもを預けられるように、社内や会社の近隣に設ける保育・託児施設
⇒病院内で働く医師や保育士が就業中に子どもを預けらえるように、病院内または病院に併設された保育・託児施設
⇒共働き・ひとり親世帯の小学生を放課後や長期休みの間、保護者の方に代わって預かる施設
⇒子どもが病気の際に保育するのが困難な保護者の方に代わって、一時的に預かり保育する施設
⇒6~18歳までの障害のある児童を放課後や長期休みの間、保護者の方に代わって預かる施設
⇒児童福祉に関する事業を行う各種施設の総称
保護者の方のニーズに合わせて今後も上記のようにさまざまな働き口が増えるとみられており、保育士の需要もますます高まっていくと考えられます。
保育士の処遇が年々改善されている点にも注目です。2013年および2015年には、保育士の給与アップとキャリアアップを図るため、内閣府より「保育士処遇改善等加算」制度が設けられました。
⇒平均経験年数に応じた給与のベースアップを図るしくみ
⇒副主任保育士・専門リーダー・職業分野別リーダーの3つの役職を増設し、若手や中堅保育士のキャリアアップを支援するしくみ
また最近では、「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」として2022年2月より保育士の収入を3%、月額約9,000円の賃上げが実施されるなど、「給与が低い」といわれがちな保育士の収入面が徐々に改善され続けています。
保育士の処遇改善に関する政策は、保育士の需要の高まりと保育士不足を解消するために今後も実施されると見込まれています。働き方がよりよく整備されている現状からも、保育士の仕事は将来性があるといえるでしょう。
【参考】
内閣府「施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについて」
内閣府「保育士・幼稚園教諭等を対象とした処遇改善(令和4年2月~9月)について」
技術革新が急速に進展し、現在はAI(人工知能)が生活やさまざまなジャンルの産業に導入されています。
2015年には、野村総合研究所とイギリス・オックスフォード大学との共同研究から「日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に」という試算結果も発表されており、AI化による雇用の減少が不安視されている業界も存在します。
しかし、子どもの気持ちに寄り添いながらひとりひとりきめ細やかに生活をサポートし、常に臨機応変な対応が求められる保育士の仕事は、データ分析や事務処理を得意とするAIに到底取って代われるものではありません。
データや事務処理などにAIが導入されて業務の効率が上がることはあっても、すべての仕事が奪われてしまう可能性は低いでしょう。
技術の発展が今後の雇用に影響しない点も、保育士の将来性があるといえる理由のひとつです。
【参考】野村総合研究所「日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に」
保育士の需要の高まりと将来性を把握したところで、最後に、保育士として今後一層活躍していくために押さえておきたい大切なポイントをご紹介いたします。
今後の保育士には何が求められ、どういったスキルが必要となるのか、ぜひ参考にしてみてください。
近年、保護者の方の働き方が多様化するとともに、保育士へのニーズも多様化し、より専門的で質の高い保育が求められる傾向にあります。
そのため、保育士として活躍していくためには、外部の研修へ積極的に参加したり、保育に役立つ資格を取得したりと、保育技術の多面的なスキルアップに努めることが大切です。
また、政府が進める保育士のキャリアアップ研修に参加するのも良策です。スキルとキャリアを磨き、高度な保育を提供できるよう常に向上心を持って備えましょう。
なお、保育士のスキルアップに向けた研修は、全国保育士会が主催するもの、民間企業・団体が主催するものなどがあります。気になる方は、各公式ホームページなどをこまめにチェックしてみてください。
子どもたちをはじめ、同僚・保護者の方・地域の方々など、さまざまな人間関係のなかで働く保育士には、あらゆる場面でコミュニケーションスキルが問われます。
とくに、子どもを健やかに保育するためには、ひとりひとりの気持ちや感情を読み取り、理解してあげる力が必須。また、安心して子どもを任せてもらうためには、保護者の方との円滑なコミュニケーションも欠かせません。
コミュニケーションとは、相手の立場に立って、相手の心情を理解することです。コミュニケーションを重ねてお互いの理解を深めることが、子どもや保護者の方、同僚保育士や地域の方などとの信頼関係につながり、良好な信頼関係がそのまま保育の質の向上へとつながっていきます。
相手を慮ったコミュニケーションは、AIでは決して代替できない大切なスキルです。保育士としてこれから一層活躍していくために、意識して磨いていきましょう。
保育士は、少子化の日本でも需要が高まり続けている将来性のある仕事といえます。保育園以外にも活躍できるフィールドが広がり、ライフスタイルに合わせた働き方もできるようになってきています。
また、国や自治体により、今後も保育士の処遇改善が進められるとみられており、賃金面を踏まえた働きやすさもさらに整備されていくことでしょう。
社会の多様化するニーズに応えていける保育士になるためには、常に向上心を持って自分自身の保育スキルを磨いていくことも大切です。
保育士として胸をはり、今後も自信をもって活躍していきましょう。
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