保育士不足は深刻な社会問題ですが、保育士の離職率はどれくらいなのでしょうか。今回は保育士の離職率を詳しく解説していきます。また、離職率の低い園の特徴もみておきましょう。
大好きな保育士の仕事を長く続けていきたい方、またこれから保育士をめざす方にも有意義な情報でので、ぜひ参考にしてください。
保育士の離職率を正しく理解するには数字で知ることはとても大切です。ここでは厚生労働省が発表している資料をもとに、離職率を詳しく解説していきます。
厚生労働省の令和2年度の資料によると、保育士全体の離職率は9.3%となっています。また、そのうち公立の保育士は5.9%、私立は10.7%です。この数値は前年度と比べて低くなっています。
これは保育士不足を解消するために、保育士に対する賃金や働き方が改善されたためと考えられます。また、公立保育園では長期で働くと給与がアップするため、私立園のほうが離職率は高いようです。
では次に経験年数で離職率をみていきましょう。厚生労働省の資料によると2年未満の保育士は14.9%ですが6~8年未満の保育士は9.1%となっています。この数字から経験年数が5年未満の保育士の離職率が高いことがわかります。このような結果をうけて、現在、多くの自治体では離職防止に対応してさまざまな取り組みが考えられています。多くの保育園でこのような取り組みが周知されてきたことで、少しずつではありますが離職率が低くなってきています。
本当に保育士の離職率が高いのか、令和3年のデータから他業種と比べてみました。一般労働者は6.3%です。ただ、パートタイムの労働者では12.9%という結果になっています。この数値から保育士よりも他業種の方が働き方によっては離職率が高いことがわかります。
保育士不足という認識が社会全体で定着していることもあり、離職率が高いと考えられているのかもしれません。では次にどうして保育士が離職してしまうのか、その理由を詳しくみていきましょう。
【参考】
厚生労働省 保育士の現状と主な取組
厚生労働省 保育士等に関する関係資料
厚生労働省 令和3年上半期雇用動向調査結果の概要
保育士が離職する理由はいったいどういうものなのでしょうか。ここでは保育士の離職理由をお伝えしていきます。
現在は生活サイクルの変化に合わせた多様な働き方が選べるようになってきました。保育士は自分の生活に合った働き方が選びやすい職種です。これを魅力に感じている方もいるでしょう。ただ、これからお伝えするさまざまな理由から離職を考えてしまう方も多いようです。
待機児童問題を解消するため、多くの自治体では保育所の増設や子どもの定員を増やす取り組みに力を入れています。です。しかし、これが原因で保育士にかかる負担はとても大きくなり、やむを得ず離職してしまうという保育士もいます。また、負担が大きくなるのに賃金がそれに見合わないと考える方もいます。
保育所が増えても、そこで働く保育士がいなければ待機児童は解決しません。保育士の離職と待機児童の問題はどちらかだけが解決する問題ではなさそうです。
保育所には多くの人間関係があります。その関係のどれかひとつでもうまくいかないと仕事へのモチベーションが下がり、離職へとつながってしまいます。
厚生労働省の調査によると退職の一番の理由は職場の人間関係となっています。保育の方針であれば話し合いで解決することも可能ですが、人間関係は問題が生じたとき解決することが難しく、最悪の場合では職場でのいじめにまでに発展してしまうときがあります。このようなことで離職してしまうと、もう一度保育士の仕事に就くことを諦めてしまうことが多いのです。
働き方改革によって勤務時間や仕事量が見直されていますが、実際にはやるべき仕事が減ることは少なく、誰かがそれらの仕事を担わなければならない場合が多くあります。
特に大きな行事の前後は準備や片付けなどもあり、いつも以上の仕事をこなさなくてはなりません。就業時間で終わらない場合はサービス残業や、持ち帰って家で仕事をすることもあるでしょう。それらのことを考えると離職という結論になってしまうこともあるでしょう。
保育士が不足している職場では休みがとりづらく、その結果、離職してしまうといったことが多いです。また、自分の休みたいときに休めないという場合や、有給も希望通りにとることができない保育園もあります。
休みがとりづらいとモチベーションが下がり、離職を考えるのも仕方ないことなのかもしれません。また、出産や育児からの復職支援がない場合にも、退職を選んでしまうこともあります。
【参考】
厚生労働所 保育所等関連状況とりまとめ(令和2年4月1日)
厚生労働省 保育士の現状と主な取組
保育士不足が社会問題になっていても、なかには離職が少なく、保育士が足りているという園もあります。ではそのような園は保育士不足の園とどこが違うのでしょうか。保育士の離職が少ない保育園が多くなれば、保育士不足も解消していくはずです。
ここでは離職率が低い園は何が違うのかについてお伝えします。自分に合った保育園を探すヒントになるかもしれません。
退職の一番の理由は職場の人間関係ということをお伝えしました。つまり、人間関係の悩みが少ない園は離職も少なく、働きやすい園ということになります。そのためには職場のスタッフ間で信頼関係が築けるような工夫が必要です。
横のつながりや上下関係の連携がスムーズで話しやすい環境があれば、コミュニケーションが活発になり、多くの情報を共有できます。仕事の悩みなども気軽に相談でき、お互いの仕事の量を調整しやすくなるでしょう。
そのほか、保育士の年齢層のバランスが良い園は風通しのいい職場であることが多いです。このような園は仕事もしやすく、離職が少ないと言えます。
保育園が掲げている理念や方針に共感して就職したのに、実際に行われている保育が理念から外れてしまうと保育に対するモチベーションが下がってしまうことがあります。
保育理念や方針が一貫していて、それが保育に反映されている園は保育自体もやりやすく離職が少ないと言えます。つまり、保育のねらいが分かりやすく、悩まずに保育できることはストレスが少ない職場と言えます。
保育は継続していくものなので、保育士にとって保育しやすい方法やねらいはとても大切です。
家庭の都合で急に休暇を取らなくてはならない場合、保育士がみつからないといった理由で休暇を認めてもらえない園もあります。逆に、休んで大丈夫、早く帰っていいよと言ってくれるような環境であれば離職率は低くなります。
そのような園では必然的に保育士の数も多いため、休みやすい環境が整えられています。また、リフレッシュのために休暇が取れると、モチベーションが向上するので、休みが取りやすく働きやすい環境はとても大切です。
保育内容はこれまでより、より子ども主体の視点が大切にされています。その前向きな気持ちを応援してくれるような園は離職が少ないと言えます。
保育士が主体性を持つことが子どもに対しての主体的な保育につながると言われています。それらを認め、協力してくれることによって、園の雰囲気もよくなり、また保育の質も向上します。
保育士ひとりひとりのスキルアップにつながるような保育が実践されれば、保育士たちはここでずっと働きたいと考えるようになるでしょう。
多くの保育園ではホームページなどで園の理念や子どもの様子を掲載しています。最初の情報収集として、インターネットを活用することはおすすめです。
ただ、一番大切なことは、実際に園に出向いて見学をさせてもらうことです。自分の目で保育園を確かめることで、園に対する印象は違ってきます。離職を防ぐためにも、しっかり見学を行い、面接では雇用状況を確認することも大切です。
せっかく保育士になったのに、さまざまな理由によって離職してしまうことはとても残念です。離職を防ぐためにも、働きやすい自分に合った園を探すこともひとつの方法でしょう。
ぜひ長く働ける保育園で保育士としてやりがいのある毎日を過ごしてください。
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