最近、「働き方改革」という言葉をよく耳にします。今回は保育現場での「働き方改革」について詳しく解説し、また問題点もみていきます。今、保育の現場で活躍している方はもちろん、これから保育士の仕事をしたいと考えている方にも役に立つ情報です。ぜひ参考にしてください。
では実際に「働き方改革」とはどういう取り組みなのでしょうか。これは2019年に「働き方改革関連法」が施行されたことにより始まった取り組みです。この施行が目指すものは「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」とされています。そして、この改革を受けてさまざまな法律や計画が整備されつつあります。
ではなぜ、この改革が必要なのでしょうか。現在、少子高齢化に伴う人口減少の問題や育児や介護などのニーズが多様化しています。これを解決するためにもこの改革が必要と考えられています。では、なぜ保育士に「働き方改革」が必要と考えられるのか、その理由をみていきましょう。
社会問題となっている保育士不足の原因のひとつは労働環境にあると言われています。多くの業務や長時間の勤務、休暇の取りづらさなどが指摘されています。もちろん、問題はそれだけではありませんが、「働き方改革」によって働く環境の変化が期待できます。そのことによって、保育士不足の問題にも明るい兆しが見えてくることでしょう。
保育園を利用する家庭が増えたことによる、待機児童も大きな問題になっています。2021年の4月1日の調査によると全国の待機児童数は5634人となっています。前年の調査より約7000人の減少となりましたが、それでもまだ5000人以上の待機児童がいます。「働き方改革」によって、保育士の労働環境が良くなり保育士が増えると待機児童問題も解決する方向に向かっていくでしょう。
【参考】
保育士不足の問題を解決するための「働き方改革」ではさまざまな取り組みが施行されています。そのひとつが同一労働同一賃金です。この施行によってどのように賃金の形態が変わったのでしょうか。
施行前では同じ仕事を行なっていても、正規職員や非正規職員、パートなどの雇用形態によってもらえる賃金に差がありました。
しかし「働き方改革」によって、同じ仕事を行なっている場合には雇用形態にかかわらず同一の賃金であることと定められました。これは基本給に限らず賞与についても同じです。これによりパートで働く保育士にもモチベーションや責任感が感じられると考えられています。
改革以前も有給休暇制度はありましたが、改革後は有休休暇の取得が義務化されました。対象は年間で10日間の有休休暇が付与される労働者で、10日間のうち5日間は有給休暇の取得が義務化されました。
この施行によって保育園側は保育士が必ず有給休暇を取れるように配慮しなくてはなりません。休みやすい環境は働きやすさにもつながります。しかし保育士が不足している現場では有休休暇中の人員の確保が難しいこともあるでしょう。
改革前以前は労働時間に上限がありませんでした。そのため、残業や持ち帰りの仕事に対しての線引きも曖昧で、保育士の大きな負担にもなっていました。しかし改革により時間外労働の上限が定められました。
ただし、例外もあり特別な事情の際には下記のように定められています。
このように残業に対しての共通認識が高まり、それが働きやすさへとつながっていくと期待されています。
ここまで「働き方改革の」具体的な内容について説明してきました。ここからはこの改革によってどのように働き方が変わるのかをみていきましょう。これらを知ると、保育の仕事が思っているよりも働きやすく、魅力的な仕事であるかを理解できるはずです。
ワークライフバランスとは仕事と生活のバランスをとることです。このバランスをうまく保つことで、働きやすさや自分の生活を充実させることにつながります。「働き方改革」の時間外労働の短縮や有給休暇取得の義務によって、労働条件が改善されています。これにより、より良いワークライフバランスを保つことができるでしょう。
保育士は子どもたちの保育のほかに、事務作業もしなくてはなりません。しかし現在、「働き方改革」によって、保育士の事務作業が大きく軽減されつつあります。そのひとつがICTシステムの導入による、業務の効率化です。ICTシステムについては後の章で詳しく解説します。
保育施設にはさまざまな雇用形態で働く保育士がいます。しかし、非正規の保育士の中には給与の面では納得のいかない方も多くみられます。給与の不平等は仕事のモチベーションを低下させ、保育の仕事に魅力を見出せなくなってしまいます。この問題を解決するために同一労働同一賃金の考えのもと、給与の改善が行われました。このことによって、より自分の働きやすい働き方を賃金に関わらず選ぶことが可能になりました。このように個人の働き方が尊重されることは、仕事と子育て、介護などの両立も可能となるでしょう。
「働き方改革」で時間外労働についての規定が明確化されました。雇用側では今まで以上に保育士の労働時間を管理しなくてはなりません。また、有給休暇の取得も義務化され、プライベートが大切にされるようになりました。長時間労働を負担に感じている保育士も多かったため、働きやすい環境へと変わっていくでしょう。
「働き方改革」によって保育士の負担が軽減されます。保育の仕事は保育士が心身ともに元気に働き、子どもとのふれあいを楽しめる余裕が必要です。この「働き方改革」で仕事にゆとりが生まれ、子どもの保育に良い影響を与えることが期待できます。
ここでは保育園の「働き方改革」の取り組みをみていきます。多くの保育園ではさまざまな情報技術や工夫を取り入れています。ただし、大切なことはこの取り組みを保育園側は保育士にきちんと説明をし、「働き方改革」を保育士自身が認識することです。
「働き方改革」によって労働者の労働時間が厳しく管理されるようになりました。今まで、残業、もしくは持ち帰り仕事になっていた業務を見直し、不必要な作業を減らす必要があります。業務の中でも委託可能なものは外注サービスを利用することも考えていくとよいでしょう。
ひとことで労務管理といっても実際は多くの仕事があります。ここに代表的な労務管理の内容をご紹介します。
一部の保育施設ではこのような労務管理があいまいで、保育士自身が自分の労務管理をしている場合もあるでしょう。しかし、これからは保育園側が適正に労務管理を行わなければいけません。そのためにも労務管理業務専門のスタッフを配置し、情報管理システムを活用しながら、効率よく労務管理ができるように工夫していく必要があります。
保育施設では情報通信技術(ICT)の導入が進められています。ではこのICTによって保育の現場はどのように変わってきたのでしょうか。
園児の個人情報をICTで管理することにより、担任はもちろん、他の保育士間での情報共有が簡単になります。主に日々の体調や成長の様子を記録する目的で使います。写真の取り込みも簡単なため、文書化も容易です。全ての園児の情報を保育士全体で共有することで、より多くの大人で見守ることができます。
園からのお知らせなど手書きしていた文書をICT化することによって、保護者がインターネット上で閲覧したり、メールで受信したりできるようになります。忙しい保護者にとっても都合のいい時間にお知らせを読むことができる点がメリットです。毎日の出欠もインターネットで管理できれば、電話をかけに出向く必要もなくなります。
勤務日や勤務時間についてスタッフ全員に周知できるため、連携がとりやすくなります。また、勤務シフトも簡単に作成できます。このことで、各自の勤務時間や残業などを園全体で把握できるようになります。
保育料はそれぞれの家庭の状況によって計算方法が違うため、煩雑な事務処理が必要です。ICT化によって自動で保育料が算出され、各家庭への請求まで行うことが可能なため、かなりの作業が軽減されます。
保育業界にICTが導入されることでたくさんのメリットがありますが、保育の現場で混乱を生み出してしまう状況も知っておく必要があります。端末の準備、入力などの手間を考えると手書きの方が早いという保育士も多いようです。
一度はICTの導入をしたけれど、手書きに戻したという園もあります。またICTに慣れる必要もあり、そのことが苦痛で、馴染めないという保育士もいます。保育園側は保育士の要望に応じて柔軟な対応をする必要もあり、より使いやすいソフトの開発も必要になってくるでしょう。また、保護者側にもインターネットの整備が必要です。全ての保護者が情報を受け取れる状況でなくてはICTの活用は難しいでしょう。
保育の仕事の厳しさから保育士になるのは覚悟が必要と考えられていますが、「働き方改革」によって、今までのイメージが少しずつ変わってきています。
保育士はこれからもますます需要が高まる仕事だと考えられます。保育士にはたくさんの魅力があります。ぜひ、保育士としてたくさんの子どもたちの笑顔や成長とともに自分の成長も楽しんでみませんか。
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