保育士が受け取れる「手当」には、国から支給される手当、自治体から支給される手当、保育園から支給される手当と、さまざまな種類があるのをご存じでしょうか。
世間的に給与が低いといわれている保育士ですが、手当によって、月給の総額に大きな差が生じるケースもあります。
そこで今回は、知って得する保育士の「手当」について徹底解説いたします。どのような手当があり、どうすれば受け取れるのか、手当の基礎知識をじっくりと深めていきましょう。
近年、待機児童問題が全国的に深刻な社会問題となっています。
その大きな要因である慢性的な「保育士不足」を解消すべく、国をあげて保育士の処遇改善が進められています。
また同時に、保育士の確保と定着を目的として、独自の手当を支給している自治体や保育園なども増えています。
現在、保育士が受け取れる手当は、次の3種類に分けられます。
では、手当の詳細について、次項より順に確認していきましょう。
毎月保育園から支払われる給与には、ベースとなる「基本給」にいくつかの「手当」が含まれています。
ただし、すべての保育園で一様に手当が支給されているわけではないため要注意。
勤務する保育園によって手当の種類や支給額が異なるのはもちろん、手当が一切付与されず基本給のみが月給として支払われるケースもあります。
手当の有無や種類、支給額によって給与の総額が大きく変わるので、求人情報などを確認する際には、基本給に加えて「手当」にもしっかりと目を通しておくことが大切です。
では、保育園から支給されるおもな手当の種類を確認していきましょう。
資格手当とは、保育士資格を保有している場合に、毎月の給与へ上乗せされる手当のことです。
ただし、基本給に含まれている場合もあり、すべての園で必ず支給されるわけではありません。
また、資格手当を支給している園でも5,000~15,000円などと金額に差があるようです。
役職手当とは、「園長」や「副園長」、「主任」などの管理職に就いた方に対して、責任の重さに見合った金額が支給される手当です。
近年では、国の政策により「副主任保育士」・「専門リーダー」・「職務分野別リーダー」といった新たな中間管理職が新設されたことで、中堅保育士以下の方も役職手当の対象となるポジションを目指しやすくなっています。
特殊業務手当とは、園の行事やイベント時に支給される手当のことです。
運動会や発表会などのイベントシーズンには、準備、打ち合わせなどで残業や持ち帰りの仕事が続き、通常の保育業務よりも負担が多くなります。
その負担への対価として特殊業務手当が支払われます。
ただし、特殊業務手当の有無も園によって対応が異なるため、事前に求人情報を確認しておきましょう。
ボーナスとは、基本的に正規職員に対して、毎月の給与とは別に支払われる特別な給与(賞与)のことです。
ただし、ボーナスの支給は義務ではないため、すべての園で支払われるわけではありません。
またなかには、ボーナス支給の代わりに基本給が高めに設定されている施設もあります。
求人情報を見る際には、年収をしっかりチェックしてボーナスの有無を判断するとよいでしょう。
上記以外にも、勤務先までの電車・バス・ガソリン代などが支払われる通勤手当、家賃などを補助する住宅手当などさまざまな手当があります。
ただし、これらの手当も園によって支給の有無、支給額が異なるため要注意。
気になる方は、必ず事前に求人情報を確認しておきましょう。
つづいては、国から支給される保育士手当の種類をみていきましょう。
国では、現在のところ下記の2つの政策が実施されています。
処遇改善等加算Ⅰは、平均継続年数によって、給与のベースアップや賃金改善が期待できる制度です。
たとえば、平均勤続年数が5年以上6年未満の保育士であれば最大13%、10年以上11年未満の保育士であれば最大18%もの賃金改善が望めます。
なお、処遇改善手当は一度国から保育園に支給された後、保育園の判断によって各保育士に配分されています。
そのため、一人ひとりの保育士が受け取れる額は一様ではなく、保育園によって差が生じているのが実情のようです。
【参考】内閣府「施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについて」P.4
処遇改善等加算Ⅱは、若手や中堅保育士へ手当を支給する制度です。
以前まで、保育士の役職といえば「園長」や「副園長」、「主任」のみと狭き門で、中堅以下の保育士はなかなかそれらのポジションに就くことができませんでした。
処遇改善等加算Ⅱにより下記3つが新設されたことで、現在では若手や中堅保育士の方も役職を目指しやすくなっています。
なお、上記役職に就くためには、都道府県単位で実施される「保育士等キャリアアップ研修」の受講が必須です。
研修をすべて修了し、各園から発令されることで、副主任保育士と専門リーダーは月額最大40,000円のベースアップ、職業分野別リーダーは月額5,000円程度のベースアップが見込めます。
保育園が所在する自治体からも、保育士に対してさまざまな手当が支給されています。
手当の種類や支給額は自治体によってさまざま。
待機児童問題の解消に向けて保育士確保に積極的に取り組んでいる自治体では、かなりの額が支給される場合もあります。
どのような手当が支給されているのか、ここではいくつかの自治体を例に挙げていきます。
全国でもかなり深刻な待機児童問題を抱えている東京都では、認可保育園や認定こども園、東京都独自の認証保育園などに勤務する保育士に対して、「保育士等キャリアアップ補助」を実施し、保育士の賃金改善に努めています。
東京都がまとめた平成31年3月の集計結果では、「保育士等キャリアアップ補助」の実施により常勤保育士の月額は平均35,763 円プラス、非常勤保育士は18,161 円プラスの賃金改善結果が報告されています。
【参考】東京都福祉保健局「保育士等キャリアアップ補助金の賃金改善実績報告等に係る集計結果 平成31年3月」P.2
また、都内の区市町村によっては、「保育従事職員宿舎借り上げ支援事業」により一戸当たり月額82,000円までの家賃補助も実施されています。
ただし、「保育士等キャリアアップ補助」および「保育従事職員宿舎借り上げ支援事業」は東京都のすべての施設で実施されているわけではありません。
求職の際には、補助制度の対象施設かどうかを必ず確認しておきましょう。
神奈川県横浜市では、「職員処遇改善費」として、経験年数7年以上のすべての保育士に対し、国の制度(処遇改善等加算Ⅱ)と合わせて月額4万円アップの賃金改善が実施されています。
また、「保育士宿舎借り上げ支援事業」により、採用から10年目までの保育士に対して月額上限82,000円の家賃補助にも取り組んでいます。
(※市内保育所等を経営する事業者が保育士用の宿舎を借り上げた場合)
【参考】
横浜市「子ども・子育て支援新制度 令和2年度 説明テキスト 職員処遇改善費~制度編~」
千葉県船橋市では、船橋市内の保育園などで働く保育士(※正規職員に限らず、フルタイムのパート職員も対象)に対して、給与とボーナスに年合計585,460円の上乗せがある「ふなばし手当」が実施されています。
⇒年額上乗せ分:585,460円
また、採用から9年目までの常勤保育士に対して月額上限69,000円の家賃補助も行われています。
(※市内保育所等を経営する事業者が保育士用の宿舎を借り上げた場合)
【参考】
船橋市「ふなばしで保育士になるといいことあるみたいなっしー!」
ふなっしーも応援!船橋市内の保育園で働きませんか?~保育士さん向け支援をご紹介~
千葉県松戸市では、市内の保育園などで正規職員として働く保育士に対して、勤続年数に応じて市から毎月45,000~78,000円が支給される「松戸手当」が実施されています。松戸手当の月額支給額の詳細は次の通りです。
また、松戸市内で働く新卒保育士に対して月額上限30,000円の家賃補助も行われています。
埼玉県さいたま市では、市内の保育園などに勤務する常勤保育士に対して、毎月15,000円の給与上乗せ+期末手当67,500円の、年額193,500円分の手当を支給しています。
⇒年額上乗せ分:193,500円
また、採用から9年目以内の保育士に対して月額上限72,000円の家賃補助も行われています。
(※市内保育所等を経営する事業者が保育士用の宿舎を借り上げた場合)
【参考】
さいたま市「保育士の給与に193,500円(年額)の上乗せ補助をしています!」
北海道札幌市では、市内の認可保育園などで、採用から3・6・9年勤務を続けた保育士に、一律10万円の一時金を給付する取り組みが実施されています。
ほかにも、数多くの自治体で独自の保育士手当が支給されています。
気になる方は、ぜひ希望する自治体のホームページなどをチェックしてみてください。
なお、各自治体の手当はすべての保育園で必ず実施されているというわけではありません。
手当支給の有無は、各保育園へ事前に問い合わせておきましょう。
待機児童問題の解消および保育士確保に向けて、国では「保育士の処遇改善」政策が積極的に進められています。
また、保育士に対してさまざまな手当を設ける自治体や保育園も増加傾向にあります。
薄給といわれる保育士の仕事ですが、手当をしっかりと受け取れる施設に勤務すれば、毎月の給与を充実させることもできるでしょう。
就職や転職する際には、基本給だけでなく、手当の有無や種類、支給額にもしっかりと注目することが大切です。
ぜひ、納得して働いていける保育園をみつけてください。
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