「社会保険」については、保育士の求人を探すうえで必ず確認しておきたい項目のひとつです。
社会保険完備の保育園なら、病気やケガ、出産などで仕事を休まなければならない場合に給付を受けられるなど、万が一の際のバックアップがあり、より安心できる環境で働くことができます。
そこで今回は、社会保険の種類、加入する条件や加入のメリット、社会保険を完備している保育園の特徴など、気になる社会保険の疑問を詳しく解説いたします。
これまで、社会保険完備について気にしていなかった方も、社会保険の内容をなんとなくしか把握していなかった方も、ぜひこの機会に知識をじっくりと深めておきましょう。
求人サイトや求人票などでよく目にする「社会保険完備」とは、その保育園が下記4つの保険に加入しており、保育士として入社した際にすべての制度が適用されることを意味します。
まずは、4つの各種保険の概要を詳しく見ていきましょう。
雇用保険とは、労働者が失業した場合、子育てや介護で雇用の継続が困難になった場合などに利用できる保険制度のことです。
失業や自己都合での退職によって支給される「基本手当(いわゆる失業手当)」、就職が決まった場合の「再就職手当」、さらに「教育訓練支援給付金」や「育児休業給付金」などがあり、会社を退職した労働者の生活と雇用の安定、さらに再就職の援助などを目的として必要な給付が行われます。
なお、正社員だけでなく、下記の条件をすべて満たしていれば、派遣社員・契約社員・パート・アルバイトの方も適用対象となる点を押さえておきましょう。
保険料は労働者と会社の双方で負担します。
労災保険とは、業務中や通勤中に起きたケガ・病気・障害・死亡などに対して、労働者本人やその遺族のために必要な給付を行う保険制度です。
労働者を一人でも雇用している会社は労災保険制度に加入する義務があり、原則としてパートやアルバイトを含むすべての労働者が労働災害に対する給付を受けられます。
なお、治療費だけでなく、療養のために休業となった場合や後遺症が残ってしまった場合などでも給付の対象となるので押さえておきましょう。
保険料は全額会社負担です。
健康保険とは、労働者やその家族が病気やケガをしたとき、それによって休業しなければならないときなどに、必要な医療費や手当金を給付する保険制度です。病院の窓口で提出する保険証は、健康保険への加入によって受け取れるもので、これによって原則3割負担で治療を受けられます。
また、出産で会社を休んだ場合には「出産手当金」、子どもが生まれたときには一人につき42万円の「出産育児一時金」が給付されるのも注目ポイントです。
将来出産を考えている方は、健康保険に加入できる保育園を選んでおくとよいでしょう。
より安心して出産できる環境を備えておくことができますよ。
なお、保険料は会社と労働者が半分ずつ負担します。
厚生年金保険とは、社会福祉法人や企業などで働く方が加入する保険制度のことです。
ベースとなる国民年金に厚生年金保険で支払った保険料が上乗せされるため、下記表のモデルケースのように将来受け取れる年金支給額を増やせるのが特徴です。
(例)月収8,8000円の方が厚生年金保険に加入し、毎月8,000円の保険料を支払った場合
加入期間 |
もらえる年金額(目安) |
40年間 |
基礎年金+19,300円 |
20年間 |
基礎年金+9,700円 |
1年間 |
基礎年金+500円 |
【参考】厚生労働省「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)」
上記の通り、1年間加入しただけでも、基礎年金に加えて毎月500円の年金を終身で受け取れますよ。保険料は会社と労働者が半分ずつ負担します。
なお、公立の保育園や認定こども園などに勤務する保育士の方は公務員扱いとなるため、厚生年金保険ではなく共済組合へ加入する点も押さえておきましょう。
社会保険は、正社員であれば原則加入の義務がありますが、パートやアルバイトの方などは労働条件によって加入できない場合もあるので注意が必要です。
そこでここからは、社会保険の加入条件についてしっかりと確認していきましょう。
雇用保険は、下記2点が加入条件です。
これらの条件をクリアすれば、契約社員やパート、アルバイトも正社員同様に加入できます。
労災保険は、雇用形態や労働条件に関係なく、原則すべての労働者の加入が義務付けられています。
万一、会社が適用手続きを取っていない場合でも、給付を受けられるので押さえておくとよいでしょう。
健康保険と厚生年金保険は、雇用形態にかかわらず、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば加入が義務付けられています。
また、4分の3未満のパートやアルバイトの方でも下記5つの条件をすべて満たしていれば加入対象となるので押さえておきましょう。
項目 |
条件 |
労働時間 |
週20時間以上 |
月額賃金 |
8.8万円以上 |
勤務期間 |
1年以上の見込み |
従業員数 |
501人以上 ※500人以下場合は労使合意が必須 |
その他 |
学生でないこと |
社会保険の種類や加入条件の知識を深めたところで、ここからは、社会保険完備の保育園に就職し、社会保険に加入するメリットをご紹介いたします。
厚生年金保険は国民年金に上乗せして保険料を払っていくしくみのため、国民年金のみに加入している場合と比べて、将来より多くの年金を受け取ることができます。
また、支払うべき保険料の半分を会社が負担してくれるため、自己負担が少なく済み、さらに自分で払っている保険料の2倍の金額が給付されるのもうれしいメリットです。
社会保険に加入しておけば、保育園を辞めた場合の「失業手当金」や、病気やケガで働けなくなった時の「傷病手当金」、出産で会社を休んだ場合の「出産手当金」や子どもが生まれたときの「出産育児一時金」など、万が一の際にさまざまな手当金を受けとれます。
万が一に備えながら、安心して働いていけるのも大きなメリットと言えるでしょう。
最後に、社会保険を完備している保育園の特徴を押さえていきましょう。
一般的に社会保険完備の保育園は、休みが多く、休暇も十分に取れる、産休や育休などの取得率が高いなど、福利厚生制度がしっかり整っている傾向があります。
求人情報や求人サイトなどで社会保険完備の保育園を見つけたら、ぜひ年間休日についても目を通してください。
土日祝日休みや週休2日制となっているだけでなく、夏休みや年末年始の長期休暇もしっかりと確保されており、年間休日が120日を超える施設も数多く存在していることに気づくでしょう。
なかには、誕生日休暇など、働く保育士のためにオリジナルのユニークな休暇制度を設けている保育園もあります。
激務と言われる保育士の仕事ですが、十分に休暇と休息が取れる保育園であれば、長く働き続けることができるでしょう。
また、有給取得率が9割を超えているなど、休暇を取りやすい環境が整っているのも社会保険を完備している保育園の特徴のひとつです。
社会保険完備の保育園は、働きやすい職場環境が整っている施設が多く、産前産後や育児休業の取得率も高い傾向にあります。
そのような保育園では子育てがひと段落してから職場復帰する割合が高いため、勤務年数の長い保育士も多く在籍しています。
また、子どもの看護休暇や介護休暇などを設けている施設もあり、育児と仕事、家庭と仕事を両立しやすいのも特徴です。
なお、求人情報に「産前産後・育児休業あり」と記載されていても、実際には取得実績がないケースもあるので注意が必要です。
産前産後・育児休業などの休業制度を利用する可能性のある方は、必ず実際の取得率も確認しておくようにしましょう。
これまでみてきた通り、社会保険完備とは、雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険の4種類すべての保険を備えていることを意味します。
社会保険に加入すれば、万が一働き続けることが困難になった場合に手当金が支給されたり、将来受け取れる年金支給額を増やせるので、さまざまな恩恵を受けられます。
また、社会保険完備の保育園は、福利厚生制度が充実している傾向が高く、よりよい環境のなかで働いていけるのも魅力のひとつです。
保育士として長く活躍したいと考えている方、長く勤務できる保育園を探している方は、社会保険完備の有無は要チェックです。
ぜひ、安心して働いていけるすてきな保育園を見つけてくださいね。
【参考】厚生労働省「知って役立つ労働法-働くときに必要な基礎知識」
(c) 2025 LIKE Staffing, Inc.