神奈川県は人口約920万人・世帯数約417万世帯(令和2年1月1日現在)であり、東京に次ぐ全国第2位の大都市です。
子どもの多さから保育士の需要も高く、支援策なども充実しており、保育士が働きやすいエリアと言えるでしょう。
今回は神奈川県で保育士として働きたいと考えている方に、神奈川県の保育士事情を詳しくご紹介いたします。
勤務時間・給与・求人状況といった保育現場の現状から待機児童問題、独自の補助制度までまるごと押さえていきましょう。
まずは、神奈川県の保育士事情について詳しく解説いたします。
労働時間・給与・求人状況を把握して、保育士として神奈川県で働くイメージを膨らませてみてください。
厚生労働省が公表する令和2年度の調査結果によると、神奈川県で働く保育士の平均勤務時間(残業を除く)は、男性165時間・女性164時間です。
勤務する施設によって多少差は生じるものの、全国平均の男性169時間・女性168時間と比べるとやや下回っているのが現状です。
平均勤務時間 |
全国 |
神奈川 |
男性 |
169時間 |
165時間 |
女性 |
168時間 |
164時間 |
男女計 |
168時間 |
164時間 |
【参考】厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
厚生労働省が公表する令和2年度の調査結果によると、神奈川県で働く保育士の平均給与は男性289,100円・女性267,300円、また賞与は男性719,300円・女性800,300円です。
全体的には給与・賞与ともに全国平均を上回っており、神奈川県は保育士として働く場合に高い収入を得やすい地域であることが分かります。
平均給与/賞与等 |
全国 |
神奈川 |
||
給与 |
賞与等 |
給与 |
賞与等 |
|
男性 |
273,800円 |
722,500円 |
289,100円 |
719,300円 |
女性 |
248,400円 |
748,900円 |
267,300円 |
800,300円 |
男女計 |
249,800円 |
747,400円 |
269,500円 |
792,100円 |
なお、上記の給与および賞与は、手取り額でなく、所得税・社会保険料などを控除する前の前の金額です。
【参考】厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
厚生労働省の発表によると、令和3年1月時点の神奈川県の保育士の有効求人倍率は「3.03」とされています。
有効求人倍率 |
全国 |
神奈川 |
令和3年1月時点 |
2.94 |
3.03 |
有効求人倍率とは、厚生労働省が全国のハローワークに集まった求職者数と求人数をもとに集計する「求職者一人当たりの求人件数の割合」のことで、下記方法で算出されます。
この有効求人倍率が「1」を上回れば「求人数>求職者」の状態で人手不足の傾向、また、「1」を下回れば「求人数<求職者」の状態で就職先が少ない傾向にあることを意味します。
全国平均が「2.94」なので、神奈川県は全国的にみても保育士の需要が高い地域であることがわかります。
神奈川県の保育士事情を把握したところで、ここからは待機児童問題の現状を確認していきましょう。
待機児童は大きな社会問題ですが、神奈川県はとくに深刻な地域のひとつとされています。
待機児童数 |
全国 |
神奈川県 |
平成27年 |
23,167人 |
1,921人 |
平成28年 |
23,553人 |
2,006人 |
平成29年 |
26,081人 |
4,411人 |
平成30年 |
19,895人 |
3,793人 |
令和1年 |
16,772人 |
3,190人 |
令和2年 |
12,439人 |
2,163人 |
神奈川県の発表によると、令和2年度における待機児童数は2,163人です。そのうち3歳未満が2,055人・3歳以上が108人と報告されています。
【参考】
神奈川県「保育所等利用待機児童数(令和2年10月1日現在)の状況について」
厚生労働省「「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」を公表します・P3(保育所等待機児童数及び保育所等利用率の推移)」
なお、平成27年の国税調査結果(下記図)をみると、神奈川県は全世帯の半数以上を核家族が占めており、なかでも「夫婦と子ども」および「一人親と子ども」の占める割合が高いことが特徴です。
核家族世帯 |
単独家族世帯 |
つまり、保育施設を必要としている世帯がとくに多い地域であることが推測できます。
待機児童問題に対してはさまざまな施策が行われており、神奈川県の待機児童数過去最多となる平成29年の4,411人からは年々減少してきているものの、保育施設への入所を希望する世帯に対していまだ十分な保育サービスを提供できていないのが現状のようです。
神奈川県では、待機児童問題の大きな要因となっている「保育士不足」を解消すべく、現在さまざまな補助制度を設けて保育士の確保に努めています。
そのため補助制度をうまく活用すれば、保育士としてより働きやすい環境を整えることができますよ。
ここからは神奈川県が進める保育士へのおもな補助制度の内容を、県全体および人気エリアに分けて詳しくみていきましょう。
神奈川県で保育士として働くことを検討している方は、自分がどの制度を活用できるのかぜひチェックしてください。
まずは神奈川県全体で実施されている補助制度について解説いたします。
「保育士修学資金貸付」とは、保育士の育成と定着を補助するための取り組みです。
神奈川県に在住または県内の養成施設に在学している学生で、かつ保育士資格取得後に県内の保育所などで働く意思がある方に学費などの貸付を行っています。月額50,000円以内の学費に加え、任意で就職準備金や生活費加算などを受けられるのが特徴です。
また、養成施設を卒業後1年以内に保育士登録をし、神奈川県内の保育所等で常勤職員として5年間勤務すると、貸付金の返済が免除されます。
貸付条件 |
① 神奈川県内(横浜市・川崎市除く)在住、または県内(横浜市・川崎市含む)の養成施設に在学している ② 保育士資格を取得したのち、卒業後に県内(横浜市・川崎市含む)の保育所等で働く意思がある ③ 学業が優秀である ④ 家庭の経済状況から、真に本修学資金の貸付けが必要であると認められる ⑤ ほかの自治体が行っている保育士修学資金等を借りていない ⑥ 連帯保証人(未成年の場合は法定代理人の同意が必要)の用意がある |
貸付額 |
学費:月額50,000円以内 就職準備金:200,000円以内(任意) 生活費加算(任意) |
貸付期間 |
原則2年間 |
返還免除 |
養成施設等を卒業後、1年以内に保育士登録をし、県内の保育所等で常勤職員として5年間勤務 |
返還 |
返還免除の条件を満たさなかった場合は全額返還 【返還期間】貸付を受けた月数の2倍の期間以内 |
【参考】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会「保育士修学資金のご案内」
「保育士就職準備金貸付」とは保育士資格を有しながら現在保育士として勤務していない「潜在保育士」に向けた取り組みのことです。潜在保育士が再就職する際に必要な費用(一人1回限り20万円まで)の貸付を行い、保育人材の確保と定着を目的としています。
なお、2年間保育士として継続して 就労すると、貸付金の返済が全額免除されます。
貸付条件 |
週20時間以上保育士として勤務すること等 ① 養成施設の卒業から1年以上経過し保育士登録を行っている方、または保育士試験の合格後に保育士登録を行った方 ② 対象施設又は事業を離職した方、または勤務経験のない方 |
貸付額 |
200,000円以内(一人1回限り) |
貸付期間 |
保育士が継続して勤務した期間(最長2年間) |
返還免除 |
2年間保育士として引き続き就労した場合貸付金が返還免除 |
返還 |
返還免除の条件を満たさなかった場合は全額返還 |
なお、就職準備金は下記のようにさまざまな用途が対象となります。
【参考】
社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会「保育士就職準備金のご案内」
社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会「保育士就職準備金貸付のご案内 チラシ」
「未就学児を持つ保育士に対する保育料の一部貸付事業」とは、未就学児をもつ保育士の就職や復職を支援する取り組みです。
自分の子どもを保育所等に預け、対象施設(横浜市と川崎市は除く)の保育士として就職または復職する際、保育料の一部(月額27,000円まで)について無利子で貸付を行っています。
また、2年間保育士として継続して 就労すると、貸付金の返済が全額免除されます。
貸付条件 |
週20時間以上保育士として勤務すること等 ① 未就学児を持ち、神奈川県内の対象となる「未就学児を持つ保育士が保育所等に優先して入所する仕組みのある市町村」に在住している方 ② 未就学児を持ち、対象施設の保育士として就職または復職する方等 |
貸付額 |
未就学児の保育賞の半額(月額27,000円まで) |
利子 |
無利子 |
返還免除 |
2年間保育士として引き続き就労した場合貸付金が返還免除 |
返還 |
返還免除の条件を満たさなかった場合は全額返還 |
【参考】
社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会「未就学児を持つ保育士に対する保育料の一部貸付事業のご案内」
社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会「未就学児を持つ保育士に対する保育料の一部貸付事業 チラシ」
神奈川県では、県内限定ですが保育士として働くことができる独自の保育士資格「地域限定保育士」の試験を行っています。
なお、地域限定保育士として登録後3年が経過すると、日本全国どこでも保育士として働けるようになります。
【神奈川県独自地域限定保育士試験の特徴】
神奈川県の各自治体でも、保育士の確保と定着を目的とした独自の支援が行われています。
そこで最後に、神奈川県の人気エリアで実施されている保育士への補助制度を簡単にご紹介いたします。
まずは、横浜市が進める保育士へのおもな補助制度をみていきましょう。
(※施設卒業後、横浜市内の指定施設にて5年間継続して保育士として働くと全額返済免除。)
【参考】
横浜市「子ども・子育て支援新制度 令和2年度 説明テキスト 職員処遇改善費」
つづいては、川崎市のおもな補助制度です。
※令和2年度の改正により、月額2万円⇒4万円にアップ
※川崎市内の保育所等で5年間保育士として働くと全額返済免除
※川崎市内の保育所等で保育士として2年以上継続して勤務すると全額返済免除
【参考】
川崎市「処遇改善等加算の取扱い及び令和2年度における改正点について」
川崎市「令和3年度川崎市保育士等宿舎借り上げ支援事業について」
つづいては厚木市のおもな助成制度です。
厚木市は「保育士やるなら厚木に集まれ!!!」と銘打って、保育士確保を積極的にアピールしている注目の自治体です。
【参考】
最後は藤沢市のおもな補助制度です。
藤沢市では保育士募集案内リーフレット「Fujisawa nursing wave」を発行し、保育士確保に努めています。
※補助期間は補助開始年度から3年間
※保育施設までの交通費…上限5万円
※引っ越し費用・家財道具購入費…上限10万円
神奈川県は全国的にも保育士の給与水準が高く、さらに求人も豊富なエリアです。
また待機児童問題を解消するため、人材確保に向けたさまざまな補助制度が積極的に実施されており、保育士が働きやすい地域でもあります。
各制度の内容をしっかり把握して自分に該当するものを有効に活用していけば、就職や復職や転職が有利になり、よりよい環境のなかで保育士として働き続けることができるでしょう。
各自治体によっても独自の制度が設けられているので、気になるエリアがあれば確認してみてくださいね。
神奈川県の保育士として、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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