保育士の働き先の一つである「認定こども園」。幼稚園と保育園の両方の機能を併せ持った施設だと、大まかには分かっていても、具体的に何が違うのかいまいちわからない人も多いと思います。
今回は認定こども園とはどのような施設なのか、必要な資格や仕事内容、気になる給料事情までまとめてみました。
認定こども園は2006年に制定された幼保一元化に伴う新たな教育施設です。
幼稚園と保育園の両方の良さを併せ持っており、教育と保育を一体的に行うことができます。
幼稚園では預かりがない0歳児から利用でき、保護者の方の就労の有無にかかわらず利用も可能です。
認定こども園、幼稚園、保育園についてどのような違いがあるのかをまとめました。
保育園 |
幼稚園 |
||
管轄 |
内閣府 |
厚生労働省 |
文部科学省 |
施設の位置づけ |
園により異なる |
児童福祉施設 |
教育施設 |
利用できる年齢 |
0歳~就学前 (園によって異なる) |
生後57日~就学前 |
3歳~就学前 |
利用できる認定区分 |
1・2・3号認定 |
2・3号認定 |
制限なし |
保育時間 |
4~11時間 |
8~11時間 |
4時間 |
保育料 |
世帯収入に応じる |
世帯収入に応じる |
園による |
必要な資格 |
保育教諭 |
保育士 |
幼稚園教諭 |
給食 |
必須 |
必須 |
任意 |
認定こども園には、園によって4つのタイプがあります。
これは地域の実情や保護者の方のニーズに応じて選択が可能なように配慮されたものです。
幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能をあわせ持つ単一の施設としての機能を果たすタイプ
認可幼稚園が、保育が必要な子どものための保育時間を確保するなど、保育所的な機能を備えるタイプ
認可保育所が、保育が必要な子ども以外の子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えるタイプ
幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定こども園として必要な機能を果たすタイプ
同じ認定こども園でも、タイプごとに教育内容や保育内容が変わってきます。
幼稚園型は幼稚園から移行したため園児の人数も多く、1号認定の利用者が多いのが特徴です。
運動会やお遊戯会といった園行事、英語や音楽といった教育面に力を入れているという園も多いです。
保育園型の場合は、共働きの両親が多く行事なども幼稚園型の認定こども園と比べると少ない傾向です。
その分2・3号認定枠が幼稚園型に比べると多かったり、乳児クラス専用の園舎があるなど、乳児教育に長けた一面を持っています。
園によって特色や教育・保育方針が大きく異なるため、認定こども園だから全て同じではなく、自分がどんな保育、教育をしたいのか考えて選ぶと良いですね。
【参考】認定こども園概要
認定こども園で働くためには、保育士資格、幼稚園教諭免許の2つが必要です。
必要な資格は「幼保連携型」の認定こども園と、それ以外の認定こども園で多少異なります。
保育教諭(保育士・幼稚園教諭免許両方が必要)
3歳児以上は保育教諭の免許がのぞましいが、保育士・幼稚園教諭どちらか一方でも可
3歳児未満は保育士免許が必須
幼保連携型の認定保育園で働くために必要な保育教諭は、2015年に制定された「子ども・子育て支援新制度」により新しく誕生した資格です。
幼保連携型認定こども園で保育にあたる職員のための資格で、保育士と幼稚園教諭2つの資格が必要になります。
勤めていた幼稚園、保育園が幼保連携型の認定こども園に移行するにあたり、どちらか片方の資格しか有していない職員に向けた特例措置があります。
幼稚園教諭または保育士として3年かつ4,320時間以上の実務経験がある人は、試験や履修科目数が一部免除され、少ない負担で取得できるというものです。
2025年3月までの特例措置なので、どちらか一方のみ所持している場合は早めに両方の資格を取得しましょう。
【参考】
幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例:文部科学省
認定子ども園は園によっても保育方針や教育内容が異なります。
また、受け持っている年齢や認定区分によっても、働き方が異なってくるので、年度によって仕事内容がかわるということも。
3〜5歳の担任をするのであれば、幼稚園と同じく14時前後までの活動が主活動となります。
14時以降は1号認定の子どもが帰宅するため、子どもの数も変わってきます。
保育園のようにお昼寝が必須ではないので、事務作業をする時間を確保するのが大変という場合もあります。
幼稚園とは違い、認定こども園は保育時間が長いためシフト制が多いです。
幼稚園で働いていた職員にしてみれば、早番遅番が増えることに驚くかもしれませんし、保育園で働いた職員からは、遅番の時間が保育園より早いためありがたいと感じる方もいるでしょう。
認定こども園で働く場合、幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を必要とするため、給料が増えるかと思うかもしれませんが、幼稚園や保育園で働く場合と大きく差はありません。
内閣府による平成28年度の調査だと、保育園で働く保育士の年収が316万円程度、幼稚園で働く幼稚園教諭の年収が273万円程度、認定こども園で働く保育教諭は同じく年収273万程度という結果です。
現在は幼稚園型の認定こども園が多いため、幼稚園教諭とほぼ同じ年収であるといえます。
またそれぞれ私立の施設よりも、公立の施設の方が「公務員」となるため年収も高い傾向にあります。
【参考】保育所・幼稚園・認定こども園等に係る実態調査等の中間集計の状況について 1
さまざまな教育施設がある中、認定こども園で働くメリットとはなんでしょうか。
幼稚園教諭、保育士の資格を両方取得していたとしても、片方の資格を使わずに定年を向かえるという人も多いと思います。
認定こども園であれば、幼児教育と保育の両方を経験できます。
幼児教育もやってみたいけど、0歳や1歳といった乳児の保育も経験してみたいという方には認定こども園はぴったりな職場です。
また、幼稚園から保育園への転職、保育園から幼稚園への転職は仕事内容が異なるため、ハードルが高いですが、認定こども園で働いていたという経験は、両方の施設の内容をある程度理解しているため、転職にも有利というメリットがあります。
これまで特定の年齢の子どもだけの経験しかない場合は、業務の幅が広がるため保育士としてのスキルアップも可能です。
また、幼稚園型、幼保連携型の認定こども園の場合は定員数が100人を超える施設もあります。
子どもの人数が多いので、行事の規模も大きくなり、できることも変わってきます。
人数が多いからこそできることもたくさんあるので、さまざまな経験ができるでしょう。
認定こども園は都道府県から認定されているため、保育士の処遇改善制度やキャリアパス制度を受けることができます。
キャリアアップ研修を受講し、一定の講座の修了証を会得した場合、処遇改善費として5千円から4万円の収入アップが期待できます。
認定こども園で働くデメリットもみていきます。
保育園と同じく0歳~未就学までの子どもを預かる施設ですが、1・2・3号認定と全ての認定区分の園児がいるため、それぞれにあわせた対応が必要となります。
特に延長保育などは保育園とは違う区分による規定も増えてくるため、保育園で働いているときよりも事務作業が増えたと感じる人は多いかもしれません。
行事ひとつをとってみても、保育園で働いていた職員からしてみれば、行事一つに割く時間が多く「大変」「仕事が多い」と感じることも。
幼稚園で働いていた職員にしてみれば、初めての乳児保育に最初は戸惑いを感じるでしょう。
排泄の介助からトイレトレーニング、調乳などは経験がないため、「仕事が増えた」と感じるかもしれません。
保育園は就労している保護者の方が多いため、保護者会や保護者参加の行事などがそこまで多くないですが、認定こども園は1号認定の家庭も多く、保育園と比べると保護者の方と関わる機会がグンと増える可能性があります。
保護者対応はどこの施設もありますが、頻度が多いので「大変」と感じる人もいるでしょう。
幼保一元化に向けた認定こども園はまだ新しい制度のため、これから認定こども園へと移行する施設も増えてくるでしょう。
保育教諭のニーズはますます高まり、給料の改定や処遇改善の変化などが期待できるかもしれません。
どちらか片方で働いていた方にとっては、新たに覚えることが多く、最初は戸惑うかもしれませんが、幼稚園と保育園それぞれの良さをあわせもっているので、スキルアップの環境としては最高であるといえます。
新たなことに挑戦したい人、さまざまな経験をしてみたい人は、認定こども園で働くという選択肢も入れてみてはいかがでしょうか。
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