近年、「ブラック企業」というワードをよく耳にするようになりました。
ブラック企業とは、極端な長時間労働や残業代などの賃金不払い、パワハラが横行するなど、労働者を精神的にも肉体的にも追い詰めるような企業のことを指しますが、実は保育業界にもこのような労働環境の「ブラック保育園」があるといわれています。
今回は、そんなブラック保育園について詳しく迫っていきましょう。
ブラック保育園の特徴や見分け方、現在ブラック保育園に働いている場合の対処法まで解説いたします。
まずは厚生労働省により報告されている「ブラック企業」の一般的な特徴からご説明いたします。
など
上記を踏まえつつ、まずはどのような保育園がブラック保育園と呼ばれるのか、代表的な特徴を押さえていきましょう。
「今働いている保育園、ブラックなのかも…」と不安を抱えている方はもちろん、「就職を希望している保育園がブラックかどうか気になる」という方も、ぜひ確認してみてください。
夜遅くまでの残業や休日の出勤など、時間外に働いた分の「残業代」はきちんと支給されていますか?
厚生労働省によると、法定の労働時間・休憩・休日は次のように定められています。
そして、上記の定められた時間以上の時間外労働・休日労働・深夜労働を行わせた場合、雇用者は、労働基準法で定められている割増率以上で算定した残業代(割増賃金)を労働者へ支払う義務があります。
日中の子どもたちの保育に加え、お便り帳への記入や日案・週案などの書類作成、壁紙制作や職員会議など、毎日忙しい保育士の仕事。
とくに繁忙期には、遅くまで園に残って残業したり、休日返上で出勤することもありますよね。
しかし働いた分の残業代がまったく支給されない、または働いた分よりも大幅に少ない残業代しか支給されないのであれば、その施設はブラック保育園である可能性が高いかも知れません。
【参考】
厚生労働省「労働時間・休日に関する主な制度」
厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金表」
現在勤務している保育園では、希望通りに有給を取得できているでしょうか?
厚生労働省によれば、有給とは心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことを指します。そして、労働基準法第39条にて、雇用者は条件を満たす労働者に対して、労働者の請求する時季に(※例外あり)有給を与えなければならない旨が明記されています。
つまり、有給取得は法的に認められた労働者の権利なのです。
それにもかかわらず、「病気以外で有給を取得させてもらえない」「保育士が少なくて有給を取っている余裕がない(取得させてもらえない)」
さらには「有給を取得したいものの、言い出しにくい雰囲気がある」というように、自由に有給を取得できない状況であれば、その施設はブラック保育園かもしれません。
【参考】
厚生労働省「労働基準行政全般に関するQ&A > 年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」
厚生労働省「【リーフレットシリーズ労基法39条】年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
「保育士が少なくて、有給を取得している余裕がない」「保育士1人あたりの仕事量が多すぎる」という環境で働いていませんか?
ブラック保育園にみられる特徴のひとつに、慢性的な人員不足があります。
規定人数ギリギリで運営しているような保育園では、誰か1人でも保育士が欠ければ、日常の業務が回らなくなってしまうためなかなか休むことができません。また1人あたりの仕事量も多くなり、残業や休日返上での勤務を強いられてしまいます。人が少なくて休めない、長時間労働が常習化している、
というような施設はブラック保育園である可能性が高いといえるでしょう。
自分自身がパワハラやいじめを受けている、または誰かがパワハラやいじめを頻繁に受けている環境のなかで働いていませんか?
など園長や先輩からのパワハラやいじめが日常的に横行しているような施設はブラック保育園といえます。
「まだ働き始めていないから、ブラック保育園かどうかわからない…」
すでに保育士として働いている方なら、ブラック保育園の特徴と現在の労働環境を比べられますが、これから就職を考えている方は、希望する施設がブラック保育園かどうか、どのように見分ければよいのでしょうか。
「働く前からわからない」が本音ですよね。しかし働く前であっても、希望する保育園の情報をしっかりと収集し、さまざまな視点から注意深く観察してみるとブラック企業の特徴がみえてくるものです。
そこでここからは、ブラック保育園を見分けるためのポイントを詳しく確認していきましょう。
就職を希望している保育園の労働環境を厳しい目でジャッジしてみてください。
先ほど解説した通り、人員不足はブラック保育園の大きな特徴のひとつです。
保育士が不足している保育園では、日常業務をこなすだけでも激務となり、
長時間労働はもちろん、有給なども思うように取得できない可能性があります。ちなみに、国では保育施設を運営するにあたり、保育士の配置基準を下記のように定めています。
ただし、この配置基準はあくまで最低ラインであり、基準を満たしているからといって、必ずしも保育士が足りているというわけではありません。
配置基準を満たしていないのは論外ですが、配置基準ギリギリで運営している園にも要注意。
保育士の人数に余裕があるかどうかをしっかりとチェックしましょう。
【参考】電子政府の総合窓口 e-Gov「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」
保育士の年齢比にも目を向けてみてください。
新人や若手保育士が多く中堅以上のベテラン保育士が少ない施設、
またはベテラン保育士ばかりで若手がいないなど、
年齢層にかたよりがある施設もブラック保育園の可能性があります。
中堅の保育士がいないのは、新卒で入っても育たずにみんな辞めてしまっていることが考えられます。
同様に若手保育士がいないのも、上からのパワハラなどが原因で辞めている可能性が考えられます。
離職率が高い保育園は、何らかの理由があって保育士が定着しないという証です。
上記のような施設はブラック保育園の可能性があるため注意しましょう。
タイムカードの有無も忘れずに確認しておきましょう。
タイムカードのない施設は、勤怠管理がずさんと考えられ、ブラック保育園の可能性が高くなります。
タイムカードは勤怠管理の基本です。
タイムカードが無い保育園では、手書きの出勤簿を提出することになりますが、残業代などを減らすため、出勤簿の内容を不当に改ざんされてしまう場合があるのです。
タイムカードがあれば必ずしも安全というわけではありませんが、出勤時間と帰社時間がシステムで正確に打刻される分、安全性は高まります。
自分が働く姿をイメージして、保育園の環境や施設もしっかりとチェックしておきましょう。
子どものことを第一に考えている保育園は、安全性や衛生面に配慮しているところが多いものです。
室内や玩具などが汚れた状態で放置されている場合、職員が足りておらず細部にまで手が回っていない可能性があるので注意しましょう。
また制作物などの完成度にも注目してみましょう。
制作が得意でない、または、制作にあまり時間を掛けたくないというような方は、すべて手作りで高度な壁紙が飾られている保育園には注意した方がよいでしょう。
自分がその作業を担うため、必然的に仕事量が多くなってしまうことが予想されます。
頻繁に求人を出している保育園もブラック保育園に当てはまる危険性があるので注意しましょう。
いつも求人を出しているということは、その施設には何らかの問題があり、退職者が多く常に人員を補充しなければならない環境なのかもしれません。
また、条件が悪く人が集まらない可能性もあります。
いつまでも求人を出している=何かよからぬ理由がある、と捉えてその施設は避けるか、念入りに調べた方がよいでしょう。
では、現在働いている保育園がブラック保育園だった場合、どうすればよいのでしょうか。
最後に、ブラック保育園への対処法を確認していきましょう。
職場の環境に不満を抱えている先輩や同僚と一緒に、改善を働きかけるのもひとつの方法です。
過去には現状改善のために行動を起こし、労働基準監督署から保育園に是正勧告がでたケースもあります。
保育園側は、是正勧告を受けるとニュースなどでも取り上げられるため、改善せざるを得ない状況になるのです。
【参考】介護・保育ユニオン
ブラック保育園での勤務に毎日悩んでいるのなら、転職も視野に入れて考えてみましょう。
転職することで、状況が一気に改善する場合もあります。
ただし、「次の保育園もブラックだった…」
というようなことにならないよう、転職先は慎重に選んでください。
求人を探すときには、保育士専門の転職サイトを活用するのも良策です。
プロのアドバイザーが転職相談に乗ってくれるうえ、希望する保育園の雰囲気や労働環境、離職率など、直接聞きにくい内容についても事前にしっかりと調べてもらえますよ。
ブラック保育園には、人員不足・サービス残業が多い・有給が取れない・パワハラが横行しているなど、さまざまな特徴あります。
これから保育士として就職しようとしている方は、ぜひブラック保育園の見分け方を参考に希望している保育園を厳しい目で判断してみてください。
また、現在ブラック保育園で働いていることに悩んでいるのなら、転職も解決策のひとつです。
ブラック保育園がある一方、環境のよい保育園もたくさんあります。
しっかりと見極めて、心身ともに健やかに働ける保育園をみつけてみてください。
【参考】
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