「保育士の仕事は忙しくて大変…」、そんなイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。実際、保育士の仕事は「量」が多く、一日中休む間もなく対応に追われています。
そこで今回は、保育士を目指している方に気になる保育士の「お仕事事情」をご紹介いたします。保育士が忙しい理由と、とくに忙しくなる時間帯や繁忙期をみていきましょう。
冒頭でもお伝えした通り、保育士はとても忙しい仕事です。保育園の開園前から仕事がはじまり、子どもたちが帰った後にも仕事、さらには残業や家に持ち帰って休日返上で対応している保育士も少なくありません。何が保育士の仕事を忙しくしているのか、まずは具体的な理由を探っていきましょう。
「子どもの世話をしているだけ」と思われがちですが、実際には、保育日誌・週案・月案・連絡帳への記入などの事務作業や、壁紙などの製作、職員会議に保護者対応…と、日中の保育と並行してさまざまな業務をこなしています。
保育以外の仕事が多いにもかかわらず、それらの仕事に取りかかれるのは、基本的に子どもたちのお昼寝中や降園後などの限られた時間のみ。終わらなければ、残業や家へ持ち帰って対応することになってしまいます。
最近では、事務作業をデータ管理できるよう環境を整えている保育園もあり、事務作業の効率化が大幅に図られるようになってきたものの、まだまだアナログ作業の保育園も多いのが現状。「子どもが好きで保育士になったのに、事務作業ばかりに追われている」と保育以外の仕事の多さ、忙しさに不満を抱えている保育士も多いようです。
保育園では、季節の行事に親しみを感じてもらうため、さまざまな行事やイベントが開催されています。
【保育園の年間行事・イベント一例】
4月 |
入園式・進級式・お花見・定期健康診断・お誕生日会 |
5月 |
こどもの日・母の日・親子遠足・避難訓練・お誕生日会 |
6月 |
保育参観・父の日・お誕生日会 |
7月 |
七夕・プール開き・夏祭り・お誕生日会 |
8月 |
プール遊び・お泊り保育・お誕生日会 |
9月 |
お月見・敬老の日・避難訓練・お誕生日会 |
10月 |
運動会・ハロウィン・定期健康診断・お誕生日会 |
11月 |
お芋ほり・園外保育・卒園遠足・お誕生日会 |
12月 |
クリスマス発表会・作品展・お誕生日会 |
1月 |
お正月遊び・お餅つき・お誕生会 |
2月 |
節分・保育参観・お誕生会 |
3月 |
ひな祭り・卒園式(お別れ会)・お誕生会 |
子どもたちにとっては毎月楽しい行事やイベントですが、企画から準備、実行までのすべてを担っている保育士にとってはなかなかの大仕事ですよね。日常業務にプラスして準備をすることなりますが、実際には勤務時間内に終わらないケースがほとんどです。残業や家に持ち帰って対応しなければならず、毎日の業務をさらに圧迫してしまいます。
共働き世帯の増加などにより保育園の需要が高まっている一方、保育士不足が問題視されています。保育士が不足している保育園では、一人ひとりの負担がさらに重くなってしまいます。
なお、国では保育施設を運営するにあたり、保育士の配置基準を下記のように定めています。
【参考】電子政府の総合窓口 e-Gov「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」
ただし、この配置基準はあくまで最低ラインです。配置基準を満たしていても、保育士が足りている、余裕をもって仕事ができる、というわけではありません。そもそも、20~30人の子どもを保育士がたった一人で保育し、並行して事務作業など他の業務をこなしていくのは相当な負担です。また、配置基準ギリギリで運営している園では、風邪や急用で一人保育士が欠勤してしまうと、たちまち保育士不足に陥ってしまいます。
コストの問題などで十分に人員を確保できずにいる保育園では、保育士一人あたりにかかる負担が多く、日々膨大な業務に追われてしまうのです。
国が進める保育士の処遇改善により、平成29年度から下記3つの中堅役職が新たに創設されました。
月額5,000~40,000円の処遇改善が期待できますが、それぞれの役職に就くには、各自治体が行う「キャリアアップ研修」を受講しなければなりません。
なお、研修時間は、最低でも15時間(2~3日)以上かかってしまいます。キャリアアップを目指す保育士は、忙しい日々の合間に受講時間と勉強時間を確保しなければならず、負担になってしまう場合もあるようです。
【参考】
厚生労働省「保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について」
毎日忙しい保育士ですが、時期によっては連日残業となってしまう場合もあれば、比較的余裕をもって仕事をこなしていける時期もあります。
では、保育園の繁忙期はいつでしょうか。また1日の中で忙しい時間帯についても解説いたします。
まずは、保育士の仕事がとくに忙しくなる時期からみていきましょう。
新年度がはじまる4~6月は1年のなかでもとくに忙しいシーズンです。園生活に慣れない新入園児に、クラスや担任が変わった在園児、4月いっぱいは保育園全体がそわそわしていて落ち着きません。保育士は子どもたち一人ひとりに対して丁寧にケアをしていくことが求められます。
また、子どもたちがやっと園に慣れてきた5月頃からは、親子遠足や保育参観などのイベントが続くため、その準備に追われます。
9~12月にかけては、運動会・お遊戯会・クリスマス会といったビッグイベントが続きます。競技やダンス、遊戯の準備や練習、小道具や衣装の製作、会場の飾りつけと行事のなかでもとくに仕事が山積みになるシーズンです。勤務時間内だけでは足りず、残業や休日返上で業務に追われる保育士も少なくありません。
お餅つき・豆まき・ひな祭りといった行事に、年度最後のビッグイベント卒園式やお別れ会の準備、年度末の事務作業 と新年度の準備をすべて並行して進めていかなければならない怒涛のシーズンです。
とくに年長児クラスを受け持つ保育士は、てんてこ舞いの忙しさ。卒園式の準備や記念品作りをはじめ、小学校に提出するための書類をクラス全員分作成し、さらには新年度に担当するクラスの準備も行います。
つづいて保育士の1日を追っていきましょう。とくに忙しくなる時間帯はいつなのでしょうか。
以下は保育園のタイムスケジュール例です。
時間 |
子どもの活動 |
保育士の仕事 |
~7:00 |
|
早番保育士出勤 登園前の準備 |
7:00 |
登園開始 |
早朝時間外保育の園児をお出迎え |
~9:00 |
登園・自由遊び |
中番保育士出勤 通常保育の園児をお出迎え |
9:30 |
排泄・手洗い 朝の会・おやつ |
朝礼・その日の注意点などを申し送り |
~11:00 |
自由遊び または クラス別保育 |
園児と一緒に遊び、サポートする 歌・手遊び・工作・粘土遊び・お絵描き・プールなど年齢や季節に合わせた保育を行う |
11:00~11:30 |
排泄・手洗い 給食の準備 |
園児の排泄や手洗いをサポートする 給食の配膳を行う |
11:30~12:30 |
給食 |
園児と給食を食べながら、見守りとサポート 箸の持ち方や好き嫌いなく食べることなどを指導 食物アレルギーなどに注意を払う 食べ終わった園児をサポートする |
12:30~13:00 |
食事の片付け 歯みがき・排泄・着替え |
食器の後片づけ・布団の準備 園児たちの歯磨きや排泄、着替えなどをサポート |
13:00~15:00 |
お昼寝 |
寝かしつけ お昼寝中の園児の様子を適宜チェックする 保育日誌や連絡帳への記入など事務作業をこなす |
15:00~15:30 |
起床・排泄 おやつ |
園児を起こし、布団を片付ける おやつの準備と片付け |
16:00 |
帰りの会 |
絵本の読み聞かせ・帰りの歌・さようならのあいさつ |
16:30~ |
順次降園 |
保護者に園児の1日の様子を伝えて連絡帳などを渡す 園児が少なくなってきたら教室の掃除や事務作業などを行う |
18:00~19:00 |
延長保育 |
|
19:00 |
閉園 |
掃除・戸締り 遅番保育士退勤 |
朝の時間外保育の子どもたちが登園する7時頃~普通保育の子どもたちの登園が完了する9時頃までの間は、とてもバタバタする時間帯です。保護者の方から子どもの体調などを確認したり、保護者の方と離れるのがイヤで泣き出してしまう子どもをケアしたりと、責任をもってすべての子どもを預かるために朝から忙しくなります。
子どもたちに手洗いやうがい、排泄をうながし、発育に合わせてミルクや離乳食、給食の準備をします。給食中は誤飲・誤食・食物アレルギーに注意を払いながら、お箸の持ち方や好き嫌いなく食べることの大切さなどを指導。さらに、ふざけている子を注意したり、早く食べ終わった子をみてあげたりと、子どものサポートに追われ、自分の食事をとる暇もないほど忙しく過ごします。
給食後は歯みがき・排泄などを促し、布団の準備をして子どもたちを寝かしつけます。お昼寝中はほっと一息…といきたいところですが、この時間には、子どもたちを保育している時間にはできない事務作業をこなさなければなりません。
寝ている子どもたちに異常がないか随時確認しながら、保育日誌や連絡帳への記入などを済ませます。
おやつを食べ、帰りの会を済ませた後は、子どもたちが順次降園します。迎えに来た保護者の方に1日の様子を伝えたり連絡帳を渡したりと、保護者対応で大忙しの時間帯です。
これらのことから比較的余裕をもって過ごせる時期や時間帯はあるものの、やはり保育士の仕事はとても忙しいことがわかります。しかし、どんなに忙しくても保育士を続けている方がいるのは、保育士の仕事に大きなやりがいを感じているからではないでしょうか。
最後に、保育士だからこそ味わえるやりがいと魅力について探っていきましょう。
子どもたちの笑顔に触れられるのは、保育士の特権のひとつ。登園時に笑顔で走り寄ってくれたときや、自分が計画した遊びで子どもたちの笑顔を引き出せたときは、大きなやりがいを感じる瞬間です。
はじめて歩けた、はじめて嫌いな野菜を食べられた、はじめて「かして」を言えた、はじめて前回りができた…。子どもの成長を近くで感じることができるのも保育士だからこそ。
子どもたちのさまざまな「はじめて」に立ち会い、喜び合えたときには言葉で表せないほどの喜びと感動を味わえます。小さかった子どもたちが日々成長し、立派に卒園していく姿を見届けた瞬間は、まさに感無量ですね。
保護者の方と信頼関係が築けると、送迎時にちょっとした世間話や育児の相談をしてくれるようになるでしょう。また、「先生ありがとう」「先生のおかげで毎日保育園が楽しいようです」「先生のおかげで安心して仕事ができます」などといったような感謝の言葉をかけてもらえることもあります。
保護者の方に頼りにされている、必要とされていると実感できるのも保育士のやりがいのひとつです。
保育園にはたくさんの行事があり、保育士はその都度準備に追われます。とくに、運動会や発表会、クリスマス会などといった大きなイベントは準備で毎日大忙しです。しかし時間をかけて準備した分、イベントが無事に終了したときは大きな達成感を得ることができるでしょう。
保護者の方から歓声が上がったときや、子どもたちが「すごく楽しかったね」とはじける笑顔で言ってくれたときには、頑張ってよかったと保育士だからこそのやりがいを得られます。
保育士は毎日こなすべき業務が多いうえ、人材不足などの要因で一人ひとりの負担が大きい仕事です。忙しい日々のなかで仕事をうまくこなしていくコツは、とくに多忙を極める時期や時間帯を見越して、日頃から体調を整えておくこと、そしてなるべく早めに準備に取り掛かることです。また、保育士の数に余裕がある保育園への就職・転職を考えるのもひとつの解決策といえるでしょう。
ただし、保育士の仕事は忙しいだけではありません。子どもたちのキラキラした笑顔に囲まれて働けるのは保育士の特権。そして、「はじめて」の瞬間に立ち会えた感動や喜び、保護者の方に頼られ感謝されたときの充実感、さらに、忙しい日々を超えてやり遂げた達成感を日々味わえるのも保育士だからこそ。
保育士は、忙しくもやりがいと魅力のあふれた仕事といえるのではないでしょうか。
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