保護者の方からクレームを受け、仕事を辞めたいと悩んでいる保育士の方に向けた記事です。
悩みを解消するために、保護者の方からのクレームに対する対処法や心構えを知っておきましょう。
ここでは実際にあった保護者からのクレームの事例を紹介し、それぞれの対処法を解説します。ぜひ参考にしてください。
近年、保育園では保護者の方からのクレームが増えています。
もちろん、クレームと言っても、いわゆる「モンスターペアレント」による理不尽なクレームもあれば、保護者としての率直な意見でもあります。
しかし、「保護者・子ども=お客様」と捉えている保護者の方も多く、保育士が頭を抱えることもしばしば。
なぜ、保護者の方からのクレームが増えているのでしょうか?その主な理由は以下の3つです。
それぞれの理由から、現代の「家庭」において育児が困難になっている状況への理解を忘れないことが大切といえるでしょう。
日本は深刻な少子化に直面しています。
内閣府の「令和元年度少子化の状況及び少子化への対処施策の概況(令和2年版少子化社会対策白書)」によると、2019年の出生数は86万5234人でした。
これは過去最低出生数であることから、「86万ショック」と呼ばれています。
ちなみに、第2次ベビーブームだった1973年の出生数は209万1983人です。
つまり、ここ50年ほどで出生数は120万人以上も減少していることになります。さらに、女性が一生のうち産んだ子どもの人数を示す「合計特殊出生率」をみると1.36人であることから、一人っ子が多く、保護者による子どもへの期待値も上がっていると言えるでしょう。
【参考】令和元年度少子化の状況及び少子化への対処施策の概況(令和2年版少子化社会対策白書)
子どものいない家庭や、子どもが一人だけの家庭、未婚で子どもがいる家庭を含む「核家族」が増えています。
実家から離れ、都市部で子育てをする家庭も少なくありません。
そのため、実家や義実家とのつながりが薄く、「子育ての相談相手がいない」と悩んでしまう保護者の方も多いでしょう。
なかなか子育ての相談ができず、フラストレーションがたまってしまい、その結果保育士に対して感情的に当たってしまうのかもしれません。
また、クレームは子育てのつらさを分かってほしい、理解してほしいという気持ちの裏返しとも言えるでしょう。
共働きで心身ともに疲れているのも、クレームの背景として考えられます。
夫婦ともに家事や育児、仕事の両立に悩んでおり、そのストレスを保育園側にぶつけているケースもあります。
また、なかには保育園を「サービス」と捉えており、保育士に対して完璧なサービスを求めてくる保護者の方も少なくありません。
忙しさで心に余裕がない、または育児に対して消極的な保護者の方に見られる傾向です。
保育園における保護者からのクレームは、4種類に分けられます。
それぞれの事例から、どんなことがクレームにつながるのか、チェックしていきましょう。
子どもの事故やケガに関するクレームは、保育園の中でも特に多いクレームのひとつです。
園庭で子どもが鬼ごっこをして遊んでいたところ、転倒してしまい膝をすりむいた。
少し血が出ていたので、傷口を水で洗って消毒。
絆創膏を貼る処置をした。お迎えの際に保護者の方へケガのことを伝えたところ、後日、その保護者の方から電話にて苦情が届く。
電話にて、子どもの動きを見守り切れなかったことを謝罪。
今後は細心の注意を払って、見守るよう心がけると伝える。
ただ、ケガを100%防ぐことはできないという言葉も添えた。
保育園で子どもが元気に生活する上で、ケガはつきものです。
とはいえ、ケガを未然に防げなかったことは事実なので、その点は謝罪しましょう。
ただ、ケガを100%防ぐことは不可能なので、その点もしっかり伝えて、保護者の方に納得してもらうことが重要です。
保育園は集団生活なので、子ども同士の衝突も少なからずあります。
しかし、子どもは人とぶつかる経験を経て、成長していくことから「子ども同士の衝突=悪いこと」とは限りません。
とはいえ、保護者の中には大事な我が子を傷付けられたという憤りを感じる人も多く、保育園側にクレームを入れるケースもあります。
室内で人形を持って遊んでいたAちゃん。
トイレに行くため人形をその場に置いていったところ、Bちゃんがその人形を見つけて遊ぶ。
トイレから帰ってきたAちゃんがBちゃんに人形を取られたことに怒り、Bちゃんから無理やり人形を取る。
Bちゃんが泣く。保育士が仲介に入り、2人は仲直りをした。
お迎えの際に両者(Aちゃん、Bちゃん)の名前は伏せて、保護者の方におもちゃの取り合いがあったことを伝えると、Aちゃんの保護者が「どの子が私の子をいじめたの?」と保育士に詰め寄る。
Aちゃんの保護者にはBちゃんの名前は言わず、トラブルの詳細を伝えて、Aちゃんに不快な思いをさせてしまったことや早めに対応できなかったことを謝罪。
子ども同士のけんかは、どちらか一方が悪いというわけではありません。
ただ、中には「うちの子は悪くない」「100%相手の子が悪い」と捉える保護者の方もいます。
このような場合、納得してもらうまでけんかの経緯を伝えて、「片方が悪いわけではない」と明確に提示しましょう。
子どもや保護者の方に嫌な思いをさせてしまったことに対しては、しっかり謝罪することが大切です。
保育現場では、お遊戯会やクリスマス会など、行事にまつわるクレームもあります。代表的な事例をチェックしていきましょう。
お遊戯会の役を決めたところ、ある保護者の方から「なぜうちの子がこんな地味な役なのか」「主役にしてほしい」とクレームが。
保育士は保護者の方に「お遊戯会の役は、子どもたちと話し合った上で決まったこと」と伝えた。
子どもにも確認したところ、本人も納得しているとのこと。
その旨も伝えて、次回の行事での役決めでもチャンスはあると前向きな声かけをした。
行事の役に対してのクレームの場合、まず「子どもが納得しているかどうか」を確認しましょう。
子どもが納得しているのであれば、保護者の方も納得しやすいはずです。
また、「ほかの行事もありますよ」と声をかけるのもポイントです。
保育士のふとした態度や言葉、指導方法も、クレームの対象になります。
忙しい時間帯だったこと、そして保護者の方が職員に対して何も声をかけなかったことから、保護者の方がお迎えに来てもすぐに対応できなかった保育士。
保護者の方は数分待たされたことに対して憤りを感じ、後日クレームの電話を入れる。
その時間帯は職員が少なく、忙しかったことから、保護者の方を待たせてしまったと謝罪。
今度から、ほかに手が空いている保育士や職員室にいる保育士に声をかけてみてほしいと伝えた。
保育園を利用しはじめたばかりの保護者の場合、分からないことも多く、「誰に声をかければいいのか」と迷うこともあるでしょう。
クレームが来る前に「子どもたちの声で、保護者の方の声が聞こえないこともあるので、そのときはほかの職員へ声をかけてください」と伝えておくことが重要です。
保護者の方からのクレームに対応するときは、次の5点を心がけましょう。
それぞれのポイントをチェックして、保護者の方とよりよい信頼関係を築いていきましょう。
まずは保護者の方の話をしっかり聞いた上で、「保護者の方がどんな思いをしてるのか」を推し量りましょう。
悲しいのか、怒っているのか、ただ話を聞いてほしいのか。
また、その保護者の方が置かれている状況(ワンオペ、共働き)を把握して、必要があれば個別で相談に乗るといった対応も必要です。
保育士になったばかりの頃は「保護者の方にどんな声かけをすべきか分からない」と悩むことがあるでしょう。
1人で抱え込んでしまうと、心を病んでしまったり、さらに保護者の方との関係がこじれてしまったりする可能性もあります。
職場の仲間に相談したり、情報を共有したりして、適切な対策方法を見つけていきましょう。
保護者の方の中には、感情をむき出して意見をぶつけてくる方もいます。
ただ、保育士側は保護者の方が伝えたいことをまとめて、どんな対応が最善か冷静に分析しなければなりません。
誠実な態度で対応し、冷静に話をまとめていくことで、保護者の方の感情も徐々に収まっていくでしょう。
子ども同士のトラブルや、保護者の方との行き違いがあった場合は、事実確認をした上で、必要があれば謝罪しましょう。
特に子ども同士のトラブルは、両者に言い分があります。
「どちらが悪い、悪くない」ではなく、トラブルの正確な経緯、双方の子どもの気持ちを確認して、保護者の方に公平に伝えましょう。
保護者の方と日々コミュニケーションを取ることで、ちょっとした行き違いやトラブルを未然に防げます。
登園時や降園時など、保護者と話せる場面があれば、世間話や子どもの様子などを話して、信頼関係を築きましょう。
保護者の方からのクレームの中には、少し行き過ぎたように感じる一方的な主張もあります。
しかし、そのクレームには「誰かに話を聞いてもらいたい」「相談できる人がいない」といった背景があるのです。
クレームには、まず保護者の方の話を聞いて冷静に対応しましょう。
ほかの保育士に相談して、普段から保護者の方とのコミュニケーションを心がけることも大切です。
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