看護師が働く場所というと、病院やクリニックといった医療機関を思い浮かべる方が多いと思いますが、看護師は病院以外にも、老人ホームなどの福祉施設や保育園や幼稚園などの保育施設でも働くことができます。
特に0歳児を預かる保育園は、施設によって看護師の設置が義務付けられていたり、保育士不足の措置として、看護師1人を保育士として換算する制度があるのです。低年齢の入園が増加する流れから、今後ますます保育園での看護師の需要は高まっていくでしょう。
今回は保育園で看護師として働くメリットやデメリット、仕事内容や気になる給料事情まで、ご紹介いたします。
これまで病院で働いていた方が保育園で働くことになった場合、業務の違いに戸惑うこともあるかもしれません。保育園と病院では働き方に違いがあることをまず知っておきましょう。
病院やクリニックといった医療機関では、看護師は複数人のチームで分担して仕事を行います。しかし、保育園では看護師が1人しか在籍していない場合が多く、その場合任された業務は全て自分で行う必要があります。
もちろん、子ども一人ひとりの発達支援などは保育士と連携しチームで行いますが、書類の作成やけがの対応には1人ですべて対応します。
保育園では採血や注射、投薬といった医療行為を行うことはほとんどありません。緊急時の対応や応急処置や、投薬指示のある子に対しての投薬処置は必要ですが、病院で働く看護師と比べると医療行為はほぼないといえるでしょう。
大きな病院で働く看護師は夜勤を含めたシフト制ですが、保育園で働く看護師のほとんどは、決められた時間内で働きます。保育園によっては早番、遅番もありますが、基本は開園している時間内の勤務です。
看護師業務が主な仕事ですが、日によっては各クラスに保育補助としてはいり、子どもたちと1日を過ごすことも大切な仕事です。また、特例制度で保育士として算出されている場合には、担任として保育業務を中心に行うこともあります。
保育の現場でも看護師の知識や経験を生かすことができます。保育園で働く看護師の仕事内容をご紹介いたします。
保育園で働く看護師の主な業務は子どもたちの健康管理です。ときにはクラスに入って保育を行いながら、子ども一人ひとりの発育を見ていきます。保育園の看護師には以下のような業務があります。
子どもたちの日々の体調管理を中心に、一人ひとりの成長を見守る大切な仕事です。
感染症を未然に防ぐため、流行期には保護者の方や保育士に対策を周知し、子どもたちに手洗いやうがいの指導を行います。特に冬はインフルエンザや嘔吐下痢症が流行するので、一人ひとりの感染症に対する意識を高めることが重要です。
事前に感染症の特徴や、欠席停止期間や登園のために必要な書類を保護者に知らせておきます。子どもと接する保育士にも、感染症の正しい知識と対策を指導することも大切です。
保育士不足の解消のため、保育園で働く看護師には特例制度があります。その内容は、保育園で働いている看護師を、1人に限って保育士とみなすことができるというものです。
この特例を利用し、看護師が保育業務にあたる場合は保育補助として働くことがほとんどですが、保育士が足りていない保育園の場合、担任として保育業務を任される可能性もあります。
子どもが好きで、保育に携わりたいと考えているのであれば良いですが、あくまでも子どもたちを見守る看護師として働きたい場合には、就職前に「仕事内容」や「担任を持つ可能性があるのか」を確認しておきましょう。
病気やけが、発達障がい、早産による発育の遅れなど発達に不安がある、アレルギーを持っているといった保護者の方の悩みに対して、相談に対応することも看護師の仕事の一つです。発達のことは保育士にも相談できますが、医療的な質問には専門知識をもった看護師のアドバイスが必要とさる場面が多々あります。保育園に看護師がいるだけでも、保護者の方の安心感につながります。
保護者の方からの疑問や相談には、必要に応じて連携機関を紹介する場合もあります。そのため、普段から特別支援学校や療育施設、小児科医との定期的な連絡を持つことも業務の一つです。
次に保育園で働くメリット・デメリットをみていきましょう。
大きな病院で働く場合は夜勤を含めたシフト制ですが、保育園の場合は早番や遅番があっても、基本的に開園時間内での勤務です。そのため24時間開園している保育園でないかぎり、夜勤を行うことはありません。
病院で働く場合は土日祝日が休日ではないので、決まった曜日に休みが取りづらいのに対して、保育園の休日はほとんどカレンダー通りです。年末年始や夏季休暇もあるので、プライベートの時間が確保できるのも大きな魅力です。連休中に家族旅行などの計画も立てやすいでしょう。
また保育園で働く看護師の主な業務は、開園中に発生した子どものけがや病気の対応です。大きなトラブルがない限り、勤務時間内に業務を終えることができます。
病院勤務と比較すると残業も少なく、仕事と家庭を両立したいと考えている人には働きやすい環境であると言えます。
採血や投薬といった医療行為をほぼ行わないため、注射や採血を苦手としている看護師には働きやすい職場です。保育園で行うのは最低限の応急処置だけであり、病院での勤務と比べると精神的にも負担が少ないので、医療行為や患者の苦しむ姿を見るのがつらいと感じてしまう看護師には、保育園で働くことはメリットであるといえます。
ただ医療行為を行わない分、知識と経験を十分に生かせないと感じてしまう看護師もいます。今後は病院で看護師として勤務したい、看護師としてさらなるスキルアップをしたいと考えている場合には、保育園での勤務はやりがいを感じにくいかもしれません。
保育園に在籍している看護師は1人の場合が多いため、看護師としての業務は全て自分で行わなければなりません。1人しかいないため、自分のペースで働ける、自分の好きなように仕事ができるというメリットはあるものの、同じ立場で働く仲間が職場にいないため、相談がしにくい、業務を分担できないといったデメリットもあります。
また、保育園によっては看護師の業務だけではなく保育士の業務も任される場合もあり、1人で業務をすべて行うことに負担を感じてしまう可能性が。職種は違っても保育士や園長などは同じ園で働く仲間なので、業務が多くて負担に感じる場合は相談して業務内容を減らしてもらいましょう。
看護師として保育園で働く場合、給料や昇給なども気になるかと思います。保育園で働く看護師の給料はどのくらいなのでしょうか。
保育園で働く看護師の給与は、正社員の月収は約25~27万円、年収は400万円程度になります。病院で働く看護師の平均が月収33万円、年収480万円であることを考えると少ないと感じる人も多いかもしれません。
ですが保育園で働く看護師は、病院で働く看護師と違って夜勤がなく残業が少ないため、夜勤手当や残業代で差が出ていると考えられます。
【参考】日本看護協会 調査研究報告
病院で働く看護師は、リーダー、看護主任、看護師長、看護部長といった役職があり、昇任すると基本給が上がり手当てが付与されます。しかし保育園で働く看護師は役職がない場合が多いため、キャリアアップによる昇給は不透明です。
保育園にも主任や園長といった役職はありますが、看護師から主任に昇給するということは難しいでしょう。そのため、看護師として長く働く場合は病院と保育園では、年収に大きく差が開いてしまう可能性があります。
ですが役職が無くても、業務内容が大きく変化することはないと考えれば、精神的負担がなく安定した職場とも言えるでしょう。自分が将来どんな看護師になりたいのかを考えて判断していくと良いですね。
保育園は病院などの医療機関と働き方や仕事内容が異なりますが、看護師の知識と経験が必要とされる場面はたくさんあります。さらに子どもの発達や保育に密接に関わることができのは保育園で働く最大のメリットといえるでしょう。子どもが好きで、子どもに関わる仕事をしたい。子どもの成長を近くで見守りたいと考えている看護師にはおすすめしたい職場です。
ただし、保育園によっては保育士の業務も任されることがあるでしょう。保育士としてのスキルを磨き、高い年収を望みたいと考える方は、規模の大きな病院で働きキャリアアップを目指したほうがいいかもしれません。
就業する保育園のことは事前にきちんと調べておきましょう。就職先の選択肢として、ぜひ保育園も候補に入れてみてくださいね。
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