保育士がかつて保母さんと言われていたように、女性の仕事というイメージが強いですが、最近は男性保育士も増えてきました。体力を使ったダイナミックな遊びができ、子どもたちから男性保育士は人気がありますが、まだまだ男性保育士に対する偏見も存在します。
今回は、男性保育士の現状をみたうえで、男性保育士として働くメリット・悩みなどを解説します。保育士として働きたい、働いている男性は参考にしてくださいね。
保育士は女性が中心の仕事ですが、少しずつ保育士に就く男性も増えています。まずは男性保育士の現状をみていきましょう。
国勢調査によると、男性保育士の割合はおよそ3%。
2015年の統計では15,980人の男性保育士が就業しています。しかし男性保育士の割合は年々増えているため、今後はさらに多くの男性保育士が活躍していくでしょう。
それでもまだまだ数は少なく、女性しか働いていない保育園がほとんどです。
【参考】内閣府 男女共同参画局
男性保育士が少ない理由の一つに、男性保育士を採用しない保育園があるということがあげられます。男性保育士が働くための設備(更衣室やトイレ)が無く、男性保育士を採用できない。男性保育士を採用したことが無いため、男性保育士が働くマニュアルが整っていないという理由から採用を渋る。
採用しない理由はさまざまですが、男性保育士を採用している保育園が少ないために、保育園での勤務ではなく、他の企業を検討するという男性保育士は多いかと思います。
保育士として働きたい場合、小規模保育園や乳児専門の保育園よりも、大規模の保育園の方が採用されやすいです。また、系列保育園が複数ある保育園も採用されやすい傾向があります。
小規模保育園は施設が小さいため、更衣室や事務室が兼用で使われていて男性が働く環境を作りにくいという事があげられます。
また、乳児期は男性保育士に任せたくないと考える親が多いため、乳児しか受け入れていない乳児専門の保育園の場合、男性保育士は採用しない方針の保育園もあります。
逆に大規模保育園の場合、男性保育士は重宝される存在です。男性保育士の強みでもあるダイナミックな遊びができるからです。またある程度人員を確保できる保育園なら、スタッフのバランスを考えて男性を雇用したいと考えます。
複数の保育園を運営している株式会社や法人だと、「○○園は採用できないけど、△△園であれば働ける」といった提案をしてもらえたり、系列園が多いからこそ昇給やキャリアアップが見込みやすいというメリットがあります。
保育士の給料は低いと言われますが、男性保育士の場合はどうでしょうか。平成30年の賃金構造基本統計調査によると、男性保育士の平均年収はおよそ370万円。女性保育士は347万円と、男性の方が高い傾向にあります。
特に40代の男性保育士の年収が高く、年収の平均は500万と女性に比べてもかなり高い水準です。勤続年数は男性が5.9年、女性は8.6年と圧倒的に男性の方が短いにも関わらず、男性保育士は年収が高いのは驚きですね。
【参考】賃金構造基本統計調査
待機児童の問題や保育士不足の問題から、保育士の有効求人倍率は現在も高い傾向にあります。保育士不足のため、自治体によっては独自の処遇改善手当や家賃補助制度などを取り入れ、保育士の待遇が改善されている場所も増えてきました。
また男性保育士の場合、昇進や昇給といった面で有利な場合が多いです。女性と違い、出産や結婚でキャリアが途切れることが少なく、長く勤めやすいため、給料や待遇面が期待できます。長く勤めていれば園長や主任といった役職にも抜擢されやすく、30代で園長職に就く人も珍しくありません。
また園長以外にも、保育士の経験を活かして保育園を運営する法人や企業の職員になり、保育園運営のサポートに回るという働き方もあります。
男性保育士が全国的に増えてきたとはいえ、保育園は女性が中心の職場です。男性保育士だからこそ抱える悩みとその解決法をあわせてご紹介いたします。
一番多い悩みは人間関係です。女性が多い職場なので、仲良くしすぎて「付き合っているの?」と疑われたり、ちょっと触れただけなのに「セクハラ」と言われたり。理不尽に思う事もあるかもしれません。ですが男性保育士がいることで職場環境が良い雰囲気に変わるという事もあります。
男性保育士に限らず、仕事とプライベートはしっかりと線引きする。仲が良い相手でも礼儀を忘れない。働くうえでの心構えをしっかりと貫くようにしましょう。
男性保育士が働くための設備が整っていないという場合もあります。規模が小さい保育園ではトイレが共用という場合が多くあります。利用には気が引けるという男性保育士もいるかもしれません。
更衣室を新たに用意するのが難しく、女性と同じ更衣室を時間で分けて使ったり事務所の片隅にカーテンを設置して使用したり、保育園によってさまざまな工夫をとっています。
更衣室がないから、ロッカーがないからどうにかしてほしい。ではなく、事務所にパーテーションを設置していいかと「提案」することで、環境は改善されやすいです。
また、トイレを使用した後はきれいになっているかチェックをする(座って排泄する、洗面台の周りに水が飛び散っていないか確認する)、更衣室を利用するときにも自分の後に使う人が気持ちよく使えるように出る前に確認する。そういった配慮はみんなが気持ちよく働くために必要なことです。
「男性保育士には女の子の着替えやオムツ交換をさせないでほしい」といった、保護者の方からの意見は、少なからずあります。男性保育士や男性ベビーシッターが、わいせつ行為を行い逮捕された事件をうけ、保育園側が保護者の方に安心して預けてもらえるよう、保護者の方からの意見が無くても、着替えやおむつ交換を禁止にしている保育園もあります。
禁止にすることで男性保育士を守ることにつながりますが、あまりにも禁止事項が多い場合は業務にも支障が出てきてしまいますよね。クラス懇談会などで、着替えに入る事を園長やクラスリーダーを交えて保護者にしっかりと説明し、お互いが納得できる機会を用意してもらいましょう。
自分自身を守るためにも、疑われる行為はしないようにし、できるだけ他の保育士がいる状況を作るようにしておくと安心して働くことができると思います。
女性が多い職場だからこそ、男性が重宝される場面が多いです。次に男性保育士として働くメリットをご紹介したいと思います。
鬼ごっこやケイドロといった走る遊びでは、体力のある男性保育士は子どもたちから大人気。抱っこやおんぶ、高い高いといったふれあい遊びも、女性保育士とは違う高さがあるため、子どもが「男の先生が良い!」なんて言うことも多いです。
男の子にとって同性である男性保育士は、力加減をせずに本気で遊ぶことができる存在でもあります。子どもたちの成長を女性保育士とは違った関わり方で手助けできますね。
遠足などで子どもをトイレに連れて行く場合、男性保育士なら子どもを男子トイレに連れていく事ができます。女性保育士だけの場合は、女子トイレしか使用できず使える個室が限られてしまいますが、男子トイレを使えることで子どもを分散でき、トイレにかかる時間が短縮されます。防犯面からも男性がいることで安心できるという保護者の方もいるかもしれません。
女性だけの保育園だと、どうしても意見の偏りが現れがちです。特に男の子からは「もっとこうしたらかっこいいのに」という思いも出てきます。
男性保育士がいると、男性目線からの意見も取り入れることができるので、保育の内容の幅が広がります。運動会や発表会といった行事の内容も、女性では考え付かないようなアイディアを出してくれることが多く、お互いの保育がより成長できるというメリットがあります。
子育てはどうしても母親が主導になりがち。父親が意見したくても、「普段子育てしているのは私だから」と聞いてもらえなかったり、気を遣いすぎて伝えられなかったりする事も多いです。父親からの意見を男性保育士が代弁することで、母親も「先生の話だから聞こう」と耳を傾けるかもしれません。
父親も女性保育士より男性保育士の方が相談しやすいというメリットがあり、父親が子育てに参加するきっかけづくりにつながります。
少数派である男性保育士に対し厳しい意見を持つ人がいる一方で、男の子のお母さんを中心に男性保育士を歓迎する保護者の方も多くいます。また、女性だけの職場よりも男性がいる方が防犯面で安心でき、人間関係が円滑になるという意見から、男性保育士を積極的に採用したいと考えている保育園もあります。
男性、女性、両方の保育士がいることで、子どもたちの情緒を育むうえでもプラスになるので、男性保育士はこれからますます重宝される存在です。
男性だからこそできる保育もたくさんあります。男性であることを生かし、活躍できる保育士を目指してみてくださいね。
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