最近注目されている「企業内保育」。企業内保育とは従業員の子どもを預かる保育園を、企業が設置することです。そんな企業内保育所で働くことを考えている保育士の人に向けて、そもそも企業内保育とはどういうものなのか、企業内保育所ではたらくメリット・デメリット、仕事内容や給料についてご紹介いたします。
また、企業内保育所の求人を探すのにおすすめの転職サイトのほか、無資格でも応募可能な求人の有無も合わせて解説します。
企業内保育所とは、企業のオフィスに併設されている保育所です。主に、企業が従業員の子どもの預け先として提供しています。従業員の子どもの預け先を確保するとともに、勤務先に併設することで送り迎えの手間が省けるため、子どもを持つ従業員から高い支持を得ています。
ただ「企業内保育所」と一口に言っても、施設によって運営形態は異なります。まずは企業内保育所の運営形態の違いをチェックして、企業内保育への理解を深めていきましょう。
企業内保育所は「事業所内保育所(認可保育所)」「認可外保育所」「企業主導型保育所」「託児スペース」の4つに分けられます。それぞれの特徴や違いをみていきましょう。
企業内保育所のうち、国から定められた基準をクリアし、自治体から認可を受けている施設が「事業所内保育所」です。「子ども・子育て支援新制度」の中で言う「地域型保育事業」にあたります。事業所内保育所の特徴や規定は次の通りです。
事業所内保育所 |
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保育年齢 |
0~3歳未満 |
職員数 |
20人以上 |
子どもの定員 |
19人以下 |
国や自治体からの給付金・助成金 |
あり |
利用する子どもの人数が20人以上の場合、「認可保育所」と同じ基準(職員数、設備の面積)をクリアする必要があります。また、子どもの人数が19人以下の場合は「小規模保育事業A型・B型」と同じ基準を満たすことが条件となります。ほかの種類の保育所と比べると基準は厳しめですが、自治体から助成金がもらえるのがポイントです。
企業内保育所の中で、国の基準を満たしていない保育施設は「認可外保育所」に含まれます。「無認可保育所」とも呼ばれており、企業内保育所のほか次のような形態の保育施設も含まれています。
認可外保育所の場合、国の基準を満たさない分、認可保育所よりも立ち上げやすい傾向があります。園の方針や利用料を保育所側が自由に設定できるのも特徴です。その一方で、助成金や補助金がもらえないというデメリットもあります。
企業主導型保育所は認可外保育所の一種です。待機児童問題解決の一環として、平成28年に内閣府によって定められた新制度「企業主導型保育事業」の対象となる施設です。企業が子どもを持つ従業員へ向けて保育サービスを提供する際に、国からサポートが受けられます。企業主導型保育所の特徴と、通常の認可外と違う点は以下の通りです。
そのほか、職員数や配置は次の通りです。
企業主導型保育所 |
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職員数 |
・0歳児3人につき1人 ・1、2歳児6人につき1人 ・3歳児20人につき1人 ・4、5歳児30人につき1人 ※その合計数に1人を加えた人数以上 |
職員の資格 |
・1の職員の半数以上は保育士 ・保育士以外の職員は、地方自治体や児童育成協会が行う子育て支援員研修を修了する必要あり |
自由な保育形態でありながら、助成金が受けられるのが最大のメリットです。大手企業の多くは、この形態の保育所を運営しています。
【参考】内閣府「企業主導型保育事業」
企業内保育の運営方法は「単独設置型」「共同型」「地域開放型(地域枠)」の3種類があります。それぞれの特徴を取り上げていきます。
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単独設置型 |
共同型
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地域開放型(地域枠)
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特徴 |
1社が設置し運営する |
複数の企業が合同で設置し運営する |
従業員の子どもだけでなく、地域の子どもも受け入れる |
メリット |
企業が大規模な場合、従業員の子どもの保育場所を十分に確保できる |
子どもの定員が埋まりやすいため小規模すぎる企業の場合はおすすめ |
地域とのつながりが深まるほか、利用者が確保しやすくなる |
共同型の場合、園児を確保しやすくなるほか、初期費用を他社と分散できます。リスクを軽減しながら保育所を設置できるのが魅力です。なお、いずれの形態であっても、企業は保育所の設置後、外部の保育事業者に運営を委託することも可能です。
企業内保育所で働く保育士の仕事内容はどうなっているのでしょうか?企業内保育の基本的な仕事内容や、通常の保育所との違いについて解説します。
企業内保育所の仕事内容は、通常の保育所とさほど変わりありません。
ただ、保育内容や方針は企業によって異なるため、「企業独自のルール」が課せられることもあります。保育所の「個性」が出やすいのも企業内保育所の特徴です。
企業内保育所と通常の保育所の大きな違いは「勤務時間」と「保育場所」です。企業内保育所は企業の始業・就業時間に合わせて開園・閉園時間が決まります。
例えば、10時出社の企業なら、保育園も10時開園となるわけです。また、企業内保育所の多くは、企業のオフィスの中にあります。通常の保育所のように保育所だけが独立していないため、小規模な施設であることが多いです。
保育士向けの求人サイトでも、企業内保育所の求人をよく見かけます。その際、気になるのが「給料」ではないでしょうか?企業内保育所で働く保育士の給料の相場や、待遇についてまとめてみました。
地域や企業の規模にもよりますが、企業内保育所で働く保育士の給料は、通常の保育士よりも少し高めに設定されています。都心の大手の企業内保育所であれば、月給25万円以上もらえる職場もあります。保育職で高収入をねらうなら、おすすめの職場です。
業務委託でない限り、企業内保育所に務めるということは「企業の一員」になるということ。つまり、従業員と同じ金額のボーナスをもらえる可能性もぐんと上がります。実際に、月給4カ月分(88~100万円相当)のボーナスを年2~3回支給している企業もあります。
平成26年賃金構造基本統計調査によれば、保育士の年間賞与(その他特別給与額含む)は平均60万円程度のため、企業内保育所のボーナスはかなり高いことが分かります。
企業内保育所に務めると、一般の従業員と同じ福利厚生が受けられることもあります。
企業に関連するサービスをお得に受けられる施設が多いため、プライベートを充実させたい人にはうれしいメリットです。
企業内保育所には、強みもあれば弱みもあります。企業内保育所で働く際のメリットとデメリットを3つずつご紹介いたします。
企業内保育所は通常の保育所よりも給料が高く、施設ごとに「個性」が感じられるほか、さまざまなメリットがあります。中でも特に注目してほしい3つのメリットについて解説します。
企業内保育所は小規模な施設が多いため、アットホームな雰囲気の中で保育したい人にはおすすめです。子どもの人数が少ないため、子ども一人ひとりと深く向き合えます。保護者の方も同じ建物内にいるため、顔を合わせる機会が多く、交流も深まるでしょう。
企業内保育所はオフィスの中に建てられることが多く、園庭やホールなどもありません。活動の場が限られてしまうため、イベントも少なくなります。イベントが多くクオリティにもこだわる「大規模保育園」とは違い、行事の企画や準備に時間を取られません。保育士一人ひとりの負担が減るため、無理なく仕事が続けられるでしょう。
土日休みの企業なら、保育所も土日休みになることがほとんどです。土日に休みが取れるため、家族や友達と予定を合わせやすいでしょう。また、保護者の方が同じ建物内にいるため、残業ではない限り、お迎えもスムーズです。定時ぴったりに帰ることもできるでしょう。
企業内保育所のデメリットを3つご紹介いたします。
企業の業績が悪い場合、企業内保育所が閉鎖される可能性もあります。業務委託の場合、別の保育事業に委託されることもあるため、「安定」という面では弱いかもしれません。
企業内保育所には園庭やホールがなく、狭い空間の中で保育するケースが多いです。そのため、閉鎖感を感じる保育士もいます。ビルの上層階に保育所がある場合、散歩へ出かけることでさえ、かなりの労力が必要になります。
行事が少ないのはメリットでもありますが、デメリットでもあります。「行事が少ないから、やりがいを感じにくい」という保育士の意見もあります。特に、運動会やお遊戯会など、大がかりな一大イベントに携わりたい保育士は、物足りなさを感じるかもしれません。
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従業員の子どもを預かる企業内保育所。土日休みが多く、通常の保育所よりも給料が高いメリットがある一方、閉鎖感がある、企業の業績に左右されるなどのデメリットもあります。よい点と悪い点、両方を把握して、今後の転職の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?
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