東京都は、給与が全国平均を上回るうえ補助制度なども充実しており、保育士が働きやすい地域のひとつです。
東京都で保育士として働きたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
今回は勤務時間・給料・求人状況といった東京都の保育士事情や、東京都が進める保育士への補助制度などを詳しくご紹介いたします。
ぜひ、就職や転職を検討する際の参考にしてみてくださいね。
まずは、東京都の保育士事情について解説いたします。
働く際に重要となる、給与・労働時間・求人状況、さらに東京ならではの保育の特色をしっかりと押さえていきましょう。
厚生労働省が公表する令和2年度分の調査結果によると、東京都で働く保育士の残業を除く平均勤務時間は、男性172時間・女性170時間です。
全国平均は男性169時間・女性168時間なので、東京では2~3時間程度上回っているのが現状です。
平均勤務時間 |
全国 |
東京 |
男性 |
169時間 |
172時間 |
女性 |
168時間 |
170時間 |
男女計 |
168時間 |
170時間 |
【参考】厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
厚生労働省が公表する令和2年度分の調査結果によると、東京都で働く保育士の平均給与は、男性273,100円・女性278,100円です。全国平均は男性273,800円・女性248,400円なので、とくに女性の平均給与が大きく上回っていることが分かります。
平均給与 |
全国 |
東京 |
男性 |
273,800円 |
273,100円 |
女性 |
248,400円 |
278,100円 |
男女計 |
249,800円 |
277,600円 |
なお、上記平均給与額は、残業代や各種手当を含み、さらに、所得税や社会保険料などを控除する前の金額です。
【参考】厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
厚生労働省が公表する資料によると、令和2年5月時点の東京の有効求人倍率は「3.05」とされています。
有効求人倍率 |
全国 |
東京 |
令和2年5月時点 |
2.18 |
3.05 |
【参考】厚生労働省「保育士の現状と主な取組・P31 令和元年及び令和2年における保育士の各都道府県別有効求人倍率等の比較(各年5月時点)」
有効求人倍率とは、厚生労働省が全国のハローワークに集まった求職者数と求人数をもとに集計する「求職者一人当たりの求人数の割合(求人件数)」のことで、次の計算方法で算出されます。
そして、有効求人倍率が「1」を上回れば求人数が求職者を上回って人手不足の状態であること、また、「1」を下回れば求人よりも求職者の数が多く就職が難しい傾向にあることがわかります。
つまり、有効求人倍率が「3.05」である東京都は、全国平均の有効求人倍率「2.18」を上回っており、全国的にみても保育士の需要が高い地域であることがうかがえます。
一般的に、保育施設は認可保育所と認可外保育施設に大別されますが、東京都にはさらに「認証保育所」と呼ばれる保育施設が存在します。
認証保育所とは、東京都が独自の認証基準を設けて補助金を支給している保育所制度のことです。
今日の東京では、「産休明けから働きたい」「残業の間も預かってほしい」「行政に管理されている保育所に預けたい」「リーズナブルな料金で預かってほしい」など、認可保育所だけでは応えきれないほどニーズが多様化しているのが現状です。
そこで、大都市のあらゆるニーズに対して的確に応えていくために、東京独自の新しい保育所として創設されました。
なお認証保育所は、民間企業をはじめさまざまな事業者(令和3年3月1日時点で533件)がサービスを提供しており、全施設で0歳児保育を実施、13時間以上の開所を基本としているのが特徴です。
【参考】東京都福祉保健局「東京都認証保育所一覧(A型・B型)」
なお、認定保育所と認証保育所のおもな違いは下記表の通りです。
|
認可保育所 |
認証保育所 |
|
A型(駅前基本型) |
B型(小規模) |
||
0歳児保育 対象児童 |
△ 0~5歳 ※0歳児保育を実施していない施設もあり |
○ 0~5歳児 |
○ 0~2歳児 |
規模 |
60名以上 |
20~120名 |
6~29名 |
開所時間 |
11時間を基本 |
13時間を基本 |
|
保育料 |
市区町村が設定 |
自由設定(上限あり) |
|
施設基準 (面積0・1歳児) |
3.3平米 |
3.3平米 |
2.5平米 |
施設基準 (園庭) |
原則設置 ※付近の代替場所でも可 |
原則設置 ※付近の代替場所でも可 |
規定なし |
東京都で保育士として求職する際には、ぜひ認証保育所も選択肢のひとつとしてチェックしてみてください。
東京都の保育士事情を把握したところで、ここからは、東京都の待機児童問題に触れながら、東京都が進める保育士への補助制度について詳しくみていきましょう。
近年、日本の大きな社会問題のひとつとなっているのが待機児童問題です。
厚生労働省および東京都の公表によると、令和2年4月1日時点の待機児童数は全国で12,439人、うち東京都では2,343人とされています。
そして、待機児童問題を早急に解消すべく、国をはじめ、待機児童数が最も多い東京都でもさまざまな取り組みが実施されてきました。
現在の人数をみると待機児童問題はいまだ解消しているとは言い難いものの、下記表の通り、平成29年度以降大幅に減ってきていることがわかります。
待機児童数 |
全国 |
東京都 |
平成27年 |
23,167人 |
7,814人 |
平成28年 |
23,553人 |
8,466人 |
平成29年 |
26,081人 |
8,586人 |
平成30年 |
19,895人 |
5,414人 |
令和1年 |
16,772人 |
3,690人 |
令和2年 |
12,439人 |
2,343人 |
【参考】
東京都「都内の保育サービスの状況について・表3 保育所等利用待機児童等の状況」
厚生労働省「「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」を公表します・P3(保育所等待機児童数及び保育所等利用率の推移)」
なお東京都では、待機児童問題の大きな要因とされる「保育士不足問題」の解消をめざし、さまざまな補助制度を設けて保育士の確保と定着に努めています。
では、東京都で保育士として働いた場合、一体どのような支援を受けられるのでしょうか。
次項より、東京都が進める保育士への補助制度を具体的に確認していきましょう。
早速、東京都が進める保育士へのおもな補助制度をご紹介いたします。補助制度をうまく利用すれば、より働きやすい環境を整えることも可能です。東京都で保育士として働くことを検討している方は、制度のしくみをしっかりと理解し、どの制度を利用できるのかを把握しておくとよいでしょう。
「保育士等キャリアップ補助金」とは、保育人材の確保・定着を促進するとともに、保育の質の向上を目的として創設された取り組みのことです。
保育士等キャリアパスのしくみを導入している保育事業者に対し、東京都から費用の一部が補助されます。
また、キャリアアップ補助金は保育士等の処遇改善に確実に活用されるよう、対象経費が対象施設に勤務する職員の人件費に限定されています。
ちなみに東京都が取りまとめた平成31年3月の集計結果で、キャリアアップ補助金により常勤保育士の賃金月額は平均35,763 円アップ、非常勤保育士は18,161 円アップしていることが報告されています。
【参考】東京都福祉保健局「保育士等キャリアアップ補助金の賃金改善実績報告等に係る集計結果 平成31年3月」
ただし、キャリアアップ補助の対象施設や事業は決められており、どの施設でも補助を受けられるわけではありません。
求職する際には、キャリアアップ補助金制度の対象施設かどうかを必ず確認しておきましょう。
「未就学児をもつ潜在保育士に対する保育所復帰支援資金事業」とは、未就学児をもつ潜在保育士(保育士資格を有しているものの現在保育の現場で働いていない保育士のこと)に向けた取り組みです。
潜在保育士の現場復帰を支援することにより保育士の確保を目的としています。
潜在保育士が保育士として職場復帰する際に子どもを保育所等へ入所させた場合、その保育料の一部に対して無利子で貸付を行っています。
また、2年間保育士として就労すると、貸付金の返済が免除されます。
貸付条件 |
週20時間以上保育士として勤務すること等 1. 対象施設または事業に新たに勤務する保育士 2. 対象施設または事業に雇用され、産育休から復帰する保育士等 |
貸付額 |
保育料の半額(月額27,000円以内) |
貸付期間 |
保育士が勤務する期間(最長1年) |
利子 |
無利子 |
返還免除 |
2年間保育士として引き続き就労した場合貸付金が返還免除 |
返還 |
返還免除の条件を満たさなかった場合は全額返還 【返還期間】貸付を受けた月数の2倍に相当する期間以内 【返還方法】月賦・半年賦・年賦の均等払(一括または繰上げ返済も可) |
【参考】東京都社会福祉協議会「未就学児をもつ潜在保育士に対する保育所復帰支援事業」
2019年10月から保育所・幼稚園・認定こども園等を利用する3~5歳までの子どもたちの利用料が無償化されましたが、東京都独自の本制度により、0~2歳までの子どもをもつ潜在保育士の方にとってもより働きやすい環境が整えられました。
「潜在保育士の再就職支援事業」とは、潜在保育士の再就職を支援することで、保育人材の確保を図るために適用された取り組みのひとつです。
潜在保育士に対して、再就職の際に必要な経費(一人1回限り40万円まで)の貸付を行っています。
また、2年間保育士として就労すると、貸付金の返済が免除されます。
貸付条件 |
週20時間以上保育士として勤務すること等 1. 養成施設の卒業もしくは保育士試験の合格から1年以上経過した方 2. 対象施設又は事業を離職した方、または勤務経験のない方 |
貸付額 |
40万円以内(一人1回限り) |
貸付期間 |
保育士が継続して勤務した期間(最長2年間) |
利子 |
無利子 |
返還免除 |
2年間保育士として引き続き就労した場合貸付金が返還免除 |
返還 |
返還免除の条件を満たさなかった場合は全額返還 【返還期間】8ヶ月 【返還方法】月賦・半年賦・年賦の均等払(一括または繰上げ返済も可) |
なお、再就職支援資金は、下記のようにさまざま用途に活用できます。
「未就学児をもつ保育士の子供の預かり支援資金」とは、未就学児をもつ保育士に対して支援を行い、保育人材の確保と定着を図ることを目的とした取り組みです
未就学児をもつ保育士が子どもの預かり支援事業(ファミリーサポートセンター事業やベビーシッター派遣事業等)を利用した際、その利用料金の一部について無利子で貸付を行っています。
貸付条件 |
次のすべてに該当する方 1. 未就学児を持ち、保育園等を利用している方 2. 勤務の時間帯により子供の預かり支援事業を利用する必要がある方等 |
貸付額 |
子供の預かり支援事業を利用した料金の半額(年額123,000円以内) |
利子 |
無利子 |
返還免除 |
2年間保育士として引き続き就労した場合貸付金が返還免除 |
返還 |
返還免除の条件を満たさなかった場合は全額返還 【返還期間】貸付を受けた月数の2倍に相当する期間以内 【返還方法】月賦・半年賦・年賦の均等払(一括または繰上げ返済も可) |
【参考】東京都社会福祉協議会「未就学児をもつ保育士の子供の預かり支援資金」
「保育従事職員宿舎借り上げ支援事業」とは、保育士の確保・職場定着・離職防止を図るために適用された取り組みのひとつです。
保育職員用の宿舎の借り上げを行う事業者に対してその一部を補助することで、保育士の家賃負担を支援するしくみです。
対象者 |
認可保育所・認定こども園・認証保育所・認可を受けた小規模保育事業等で勤務する常勤保育従事職員 |
補助基準額 |
一戸あたり82,000円/月) |
ただし、保育従事職員宿舎借り上げ支援事業は、東京都のすべての自治体および、すべての保育施設で実施しているわけではありませんので注意してください。
保育従事職員宿舎借り上げ支援事業を利用したい場合には、希望する自治体や保育園が対象かどうかを事前に確認しておきましょう。
ここまで東京都が進める保育士への補助制度を確認してきましたが、実は区や市などの自治体でも保育士を確保するため独自の政策が行われています。そこで最後に、各自治体で行われている保育士への補助制度について、人気エリアをピックアップして簡単にご紹介いたします。
せひ、東京都で保育士として求職する際の参考にしてくださいね。
まずは、足立区が進める保育士への補助制度をみていきましょう。
奨学金を利用して保育士資格を取得し、区内の私立保育園に勤務する保育士を対象に奨学金の返済に要した費用1/2(上限10万円 /年)を補助
【参考】足立区「足立区の子どものために働く保育士・幼稚園教諭のあなたをサポート!」
つづいて、江戸川区の補助制度です。
江戸川区独自の補助(1万円相当)と東京都キャリアアップ補助(4万円相当)
【参考】江戸川区「保育士の仕事と暮らしを力強くサポートします!」
つづいて、大田区の補助制度です。
区内の私立保育園に勤務する常勤保育士で、かつ6ヶ月間の継続勤務実績がある方を対象に、月額10,000円を支給(年に2回、6万円ずつ)
つづいて、世田谷区の補助制度です。
【参考】世田谷区「保育人材確保事業」
つづいて、品川区の補助制度です。
補助金額3,000~60,000円(※交付される金額は、事業者の種類・定員人数・年齢層によって異なります)
【参考】
品川区「令和2年度 品川区保育従事職員宿舎借り上げ支援事業補助金交付要綱」
つづいて、調布市の補助制度です。
【参考】調布市「調布市保育従事職員宿舎借り上げ支援事業補助金」
つづいて、町田市の補助制度です。
市内の保育園等に勤務する方が、保育士資格を取得するために受講した講座の費用の一部を補助
【参考】まちだ子育てサイト「まちだで保育士として働きませんか」
最後に、三鷹市の補助制度をご紹介いたします。
保育園の入所選考で、同一選考点の場合に優先する基準を導入
【参考】三鷹市「保育人材の確保」
東京都では、キャリアアップ補助金制度や家賃補助などをはじめとする、保育士に向けてのさまざまな補助制度が実施されています。
各制度を活用すれば、保育士としてより良い環境で働くことができるでしょう。
ただし、都内すべての施設で補助制度を活用できるわけではありませんので注意してください。
求職する際には、補助制度の対象施設かどうかを確認しておきましょう。
また、保育士の需要が高く求人数が圧倒的に多い点や、保育士の給与が全国平均と比べて上回っている点なども東京都で働くメリットといえるでしょう。
さまざまな魅力を踏まえ、ぜひ、東京都の保育士としてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
【参考】
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